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小说《银河铁道之夜》(日中俩版)

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发表于 2006/09/17 | 编辑

猜你喜欢: С, 小鸟游六花人设, 银河铁道


看过 仰望半月的天空 的人,应该都听过这小说的名字,此贴是转载版,但由于时间过长,忘记了转载地址,此贴是我刚在邮箱里翻出来的旧贴,上边中文下边日文,适合学习日文的人用来练习

PS:本人希望在看此版的朋友们不要乱灌水,一来这只是欣赏所用,二来我只希望这帖只成为多人点看的帖子.谢谢各位合作


[ 此贴被kinda2006在2006-09-17 06:12重新编辑 ]

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1楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
一、午后的课

 

  “同学们,有人说它像一条大河,也有人说它像一片牛奶流淌后留下的痕迹——这白茫茫的一片究竟是什么东西,你们知道吗?”黑板上挂着一张漆黑漆黑的星空图,老师指着贯穿上下的一条白蒙蒙的东西问大家。
  柯贝内拉立刻举起了手。随之,又有四五个同学举手。焦班尼也想举手,可马上又放下了。的确,他好像在哪本杂志上看过,隐隐约约记得那些是由无数星星组成的。可是,最近焦班尼每天在教室打瞌睡,没有工夫看书,也没有书可看。因此对一切事情都是糊里糊涂的。
  老师很快就察觉到了。
  “焦班尼同学,你知道吧?”
  焦班尼毅然站起。然而当他站起来后才知道,自己根本无法回答这一问题。扎内利从前座回过头来,看着焦班尼,吃吃地笑。
  焦班尼张口结舌,脸羞得通红。这时老师又说话了:
  “当我们用大型望远镜仔细观察银河时,就会知道银河究竟是什么东西,是吧?”
  但焦班尼仍然不能马上回答出来。他想来想去,还是认为那是星星。
  老师为难了,于是把视线移向柯贝内拉。
  “好吧,那么请柯贝内拉同学来回答。”
  刚才还是那么踊跃举手的柯贝内拉,此刻却扭扭捏捏地慢慢站起身,半天没吱声。
  老师诧异地盯着柯贝内拉,然后迅速转向黑板说:
  “好啦。”接着自己指着星图说:“用大型高倍望远镜观察这片白茫茫的银河,我们就会发现无数颗小星星。是吧,焦班尼同学?”
  焦班尼满面绯红地点了点头。但他眼里已泪水汪汪。是的,我早就知道,柯贝内拉无疑也了如指掌。那是在博士家里,也就是柯贝内拉父亲家,和何贝内拉一起读过的那本杂志上这样写的。
  读完那本杂志,柯贝内拉还跑到他父亲的书斋里拿来一大本厚厚的书,翻开“银河”那部分给自己介绍。两人久久地欣赏黑黝黝满满一页那些星光闪闪的漂亮图片。这些,柯贝内拉怎么会忘记呢?他不会是真的回答不上来。最近,每天早晨和下午做工都很辛苦,上学时不能和大家欢蹦乱跳地玩耍,跟柯贝内拉也说不上几句话。这一切,柯贝内拉都看在眼里,记在心上。他一定是在同情自己,所以故意装作答不上来的样子。想到这儿,焦班尼觉得自己可悲,也觉得柯贝内拉很可怜。
  老师继续讲述:
  “好,如果我们就把天河看作是一条大河,那么一颗颗小星也就相当于河底的一粒粒石子和沙砾。如果再把它看作是一片流淌的牛奶,那它就更酷似一条河了。也就是说,所有的星星恰如漂浮在牛奶中那些微细的脂肪球。假如果真如此,这条河流的河水又是什么呢?那就是‘真空’。这种光线是以一定的速度传送的,太阳和地球也恰好漂浮在这中间。也就是说,我们大家就生活在天河的河水之中。从天河的水中向周围观看,便会发现,就像水越深越显得湛蓝一样,天河底越是深远,星星聚集得就越密,因此看上去白茫茫的。请大家看这个模型。”
  老师指着里面有很多闪光沙粒的大型双面凸透镜,继续对同学们说:
  “天河的形状,正如这面凸透镜。我们可以把这一个个闪光的颗粒,都看作是和我们的太阳一样的自身发光的星球。我们的太阳大致位于这个中心,地球就在它旁边。同学们,晚上请大家站在正中间,观察这凸透镜里面的世界吧。这面凸透镜较薄,只能看到星星点点的颗粒;而这边这块玻璃晶体较厚,可以看到许多闪烁的晶体颗粒,也就是星球。离我们地球远的星球,看上去白蒙蒙的。这就是目前关于银河的理论。那么,关于这个透镜到底有多大,以及里面有多少神奇的星球故事,今天就没有时间多讲了,下堂自然课上再讲吧。今晚是银河节,大家到外面好好观察天上的银河吧!好了,今天的课就上到这儿。大家把书和笔记本收好吧。”
  教室顿时响起开关书桌盖的响声。同学们向老师恭恭敬敬地行了礼,便一窝蜂地跑出教室。

   一、午后(ごご)の授業

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云(い)われたり、乳の流れたあとだと云われたりしていたこのぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか。」先生は、黒板に吊(つる)した大きな黒\い星座の図の、上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指(さ)しながら、みんなに問(とい)をかけました。
 カムパネルラが手をあげました。それから四五人手をあげました。ジョバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました。たしかにあれがみんな星だと、いつか雑誌で読んだのでしたが、このごろはジョバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を読むひまも読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした。
 ところが先生は早くもそれを見附(みつ)けたのでした。
「ジョバンニさん。あなたはわかっているのでしょう。」
 ジョバンニは勢(いきおい)よく立ちあがりましたが、立って見るともうはっきりとそれを答えることができないのでした。ザネリが前の席からふりかえって、ジョバンニを見てくすっとわらいました。ジョバンニはもうどぎまぎしてまっ赤になってしまいました。先生がまた云いました。
「大きな望遠鏡で銀河をよっく調べると銀河は大体何でしょう。」
 やっぱり星だとジョバンニは思いましたがこんどもすぐに答えることができませんでした。
 先生はしばらく困ったようすでしたが、眼(め)をカムパネルラの方へ向けて、
「ではカムパネルラさん。」と名指しました。するとあんなに元気に手をあげたカムパネルラが、やはりもじもじ立ち上ったままやはり答えができませんでした。
 先生は意外なようにしばらくじっとカムパネルラを見ていましたが、急いで「では。よし。」と云いながら、自分で星図を指(さ)しました。
「このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさんそうでしょう。」
 ジョバンニはまっ赤になってうなずきました。けれどもいつかジョバンニの眼のなかには涙(なみだ)がいっぱいになりました。そうだ僕(ぼく)は知っていたのだ、勿論(もちろん)カムパネルラも知っている、それはいつかカムパネルラのお父さんの博士のうちでカムパネルラといっしょに読んだ雑誌のなかにあったのだ。それどこでなくカムパネルラは、その雑誌を読むと、すぐお父さんの書斎(しょさい)から巨(おお)きな本をもってきて、ぎんがというところをひろげ、まっ黒な頁(ページ)いっぱいに白い点々のある美しい写真を二人でいつまでも見たのでした。それをカムパネルラが忘れる筈(はず)もなかったのに、すぐに返事をしなかったのは、このごろぼくが、朝にも午后にも仕事がつらく、学校に出てももうみんなともはきはき遊ばず、カムパネルラともあんまり物を云わないようになったので、カムパネルラがそれを知って気の毒がってわざと返事をしなかったのだ、そう考えるとたまらないほど、じぶんもカムパネルラもあわれなような気がするのでした。\n 先生はまた云いました。
「ですからもしもこの天(あま)の川(がわ)がほんとうに川だと考えるなら、その一つ一つの小さな星はみんなその川のそこの砂や砂利(じゃり)の粒(つぶ)にもあたるわけです。またこれを巨きな乳の流れと考えるならもっと天の川とよく似ています。つまりその星はみな、乳のなかにまるで細かにうかんでいる脂油(しゆ)の球にもあたるのです。そんなら何がその川の水にあたるかと云いますと、それは真空という光をある速さで伝えるもので、太陽や地球もやっぱりそのなかに浮(うか)んでいるのです。つまりは私どもも天の川の水のなかに棲(す)んでいるわけです。そしてその天の川の水のなかから四方を見ると、ちょうど水が深いほど青く見えるように、天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集って見えしたがって白くぼんやり見えるのです。この模型をごらんなさい。」
 先生は中にたくさん光る砂のつぶの入った大きな両面の凸(とつ)レンズを指しました。
「天の川の形はちょうどこんななのです。このいちいちの光るつぶがみんな私どもの太陽と同じようにじぶんで光っている星だと考えます。私どもの太陽がこのほぼ中ごろにあって地球がそのすぐ近くにあるとします。みなさんは夜にこのまん中に立ってこのレンズの中を見まわすとしてごらんなさい。こっちの方はレンズが薄(うす)いのでわずかの光る粒即(すなわ)ち星しか見えないのでしょう。こっちやこっちの方はガラスが厚いので、光る粒即ち星がたくさん見えその遠いのはぼうっと白く見えるというこれがつまり今日の銀河の説なのです。そんならこのレンズの大きさがどれ位あるかまたその中のさまざまの星についてはもう時間ですからこの次の理科の時間にお話します。では今日はその銀河のお祭なのですからみなさんは外へでてよくそらをごらんなさい。ではここまでです。本やノートをおしまいなさい。」
 そして教室中はしばらく机(つくえ)の蓋(ふた)をあけたりしめたり本を重ねたりする音がいっぱいでしたがまもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。

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2楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
二、印刷厂

  焦班尼刚出校门,却见同班的七八个同学,在校园角落一棵樱花树下,围着柯贝内拉迟迟不肯散去。他们是在商量去取今晚银河节往河里放的蓝色王瓜灯笼。
  焦班尼振臂快步走出了校门。街上,几乎所有的人家都在忙着准备今晚的银河节,有的人正挂水松叶球,有的人往扁柏上装饰彩灯,一片热闹繁忙景象。
  焦班尼没有马上回家,他穿过三条大街,来到一家规模不小的印刷厂。他向坐在门口柜台里那个穿白上衣的大胖子鞠了一躬,然后脱了鞋,走进最里面一间屋子。虽然是大白天,里面却灯火通明。一部部轮式印刷机正在飞快地运转着。一群头缠布条、头戴遮光镜的工人正呐呐有声地忙着各自手里的工作。
  焦班尼从门口径直走到第三张高台那儿,向坐在里边的人鞠了一躬。那人回身在架子上翻了半天,找出一张纸条,递给焦班尼说:
  “你今天就捡这么多吧。”
  焦班尼从那人的台子下边拉出一个小木箱,走到对面墙角。
  这里灯光比较亮,铅字摞成一堵墙。焦班尼蹲在那儿,用镊子将一颗颗小石粒般的铅字捡入小木箱里。一名系着蓝围裙的印刷工从焦班尼身后走过,冲他开玩笑:
  “嘿,小家伙,你又来了!”旁边的四五个工人既不作声,也不顾盼,只是附合着淡淡一笑。
  焦班尼揉了揉眼睛,继续埋头捡铅字。


   二、活版所

 ジョバンニが学校の門を出るとき、同じ組の七八人は家へ帰らずカムパネルラをまん中にして校庭の隅(すみ)の桜(さくら)の木のところに集まっていました。それはこんやの星祭に青いあかりをこしらえて川へ流す烏瓜(からすうり)を取りに行く相談らしかったのです。
 けれどもジョバンニは手を大きく振(ふ)ってどしどし学校の門を出て来ました。すると町の家々ではこんやの銀河の祭りにいちいの葉の玉をつるしたりひのきの枝(えだ)にあかりをつけたりいろいろ仕度(したく)をしているのでした。
 家へは帰らずジョバンニが町を三つ曲ってある大きな活版処にはいってすぐ入口の計算台に居ただぶだぶの白いシャツを着た人におじぎをしてジョバンニは靴(くつ)をぬいで上りますと、突(つ)き当りの大きな扉(と)をあけました。中にはまだ昼なのに電燈がついてたくさんの輪転器がばたりばたりとまわり、きれで頭をしばったりラムプシェードをかけたりした人たちが、何か歌うように読んだり数えたりしながらたくさん働いて居(お)りました。
 ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子(テーブル)に座(すわ)った人の所へ行っておじぎをしました。その人はしばらく棚(たな)をさがしてから、
「これだけ拾って行けるかね。」と云いながら、一枚の紙切れを渡(わた)しました。ジョバンニはその人の卓子の足もとから一つの小さな平たい函(はこ)をとりだして向うの電燈のたくさんついた、たてかけてある壁(かべ)の隅の所へしゃがみ込(こ)むと小さなピンセットでまるで粟粒(あわつぶ)ぐらいの活字を次から次と拾いはじめました。青い胸あてをした人がジョバンニのうしろを通りながら、
「よう、虫めがね君、お早う。」と云いますと、近くの四五人の人たちが声もたてずこっちも向かずに冷くわらいました。
 ジョバンニは何べんも眼を拭(ぬぐ)いながら活字をだんだんひろいました。
 六時がうってしばらくたったころ、ジョバンニは拾った活字をいっぱいに入れた平たい箱(はこ)をもういちど手にもった紙きれと引き合せてから、さっきの卓子の人へ持って来ました。その人は黙(だま)ってそれを受け取って微(かす)かにうなずきました。
 ジョバンニはおじぎをすると扉をあけてさっきの計算台のところに来ました。するとさっきの白服を着た人がやっぱりだまって小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。ジョバンニは俄(にわ)かに顔いろがよくなって威勢(いせい)よくおじぎをすると台の下に置いた鞄(かばん)をもっておもてへ飛びだしました。それから元気よく口笛(くちぶえ)を吹(ふ)きながらパン屋へ寄ってパンの塊(かたまり)を一つと角砂糖を一袋(ふくろ)買いますと一目散(いちもくさん)に走りだしました。

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3楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
三、家

  焦班尼一口气跑回家。这是一间背街小巷里的简陋小屋。并排三扇门最左边的门旁摆着一只破旧的木箱,里面长着甘蓝菜和龙须荚。两个小通气窗都垂挂着遮阳帘。  
  “妈妈,我回来了。您好一点了吗?”焦班尼一边脱鞋一边询问。
  “啊,焦班尼,累坏了吧?今天很凉快,我一直都很好。”
  焦班尼进了屋,母亲就躺在里屋床上,肩上披一条白围巾。
  焦班尼打开窗户。
  “妈妈,我买来了方糖,我给您放在牛奶里吧。”
  “你先吃吧,我现在还不饿。”
  “妈妈,姐姐什么时候回去的?”
  “三点左右回去的。”
  “妈,您的牛奶还没来吗?”
  “大概还没来吧。”
  “我这就去取。”
  “你还是先休息一下吧。吃点东西,你姐好像用西红柿做了个什么菜,就放在那儿。”
  “那我先吃啦。”
  焦班尼从窗边端过一只盛西红柿的盘子,就着面包狼吞虎咽地吃了起来。
  “妈,我估计爸爸很快就会回来的。”
  “你也那么想吗?可你怎么知道呢?”
  “今天早上报上不是说了吗?今年北边渔情特别好。”
  “可你爸爸他也许根本就没有出海打鱼。”
  “肯定去了。爸爸没有做过什么非坐牢不可的坏事。上次爸爸捐赠给学校的大蟹甲、驯鹿角什么的,现在还摆在学校的标本室里呢。六年级上课时,老师们轮流拿到教室去使用。”
  “你爸爸说好下次要给你带一件海獭皮外套的。”
  “就为这事儿,大伙儿见了我,总是提起。他们都在嘲笑我。”
  “说你的坏话了?”
  “嗯。不过柯贝内拉从不。见大家取笑我时,柯贝内拉总是非常同情我。”
  “他爸爸和你爸爸,从小就是好朋友,就像你们现在一样的年纪的时候。”
  “是吗,怪不得爸爸上次带我去柯贝内拉家玩呢。那会儿多好呀!我一放学就去柯贝内拉家玩。柯贝内拉家里有一个用酒精发动的小火车,由七节钢轨组成一个环形铁道。还有电线杆、信号灯,信号灯每当火车通过时,才亮绿灯。有一回,酒精用完了,我们就用煤油试着发动,结果火车头一下子给烧成灰了。”
  “是吗?”
  “现在我每天清晨送报时也路过他们家,可每次那儿都是静悄悄的。”
  “太早了,人家还没起床呢。”
  “只有那只看门狗‘扎吾尔’,它的尾巴如同一把扫帚,见到我来,就跟在我后边吻来吻去,一直跟到街头拐角,有时跟得更远。今天晚上,大家要去河边放王瓜灯笼,那条狗也一定会跟去的。”
  “对了,今晚是银河节呀!”
  “嗯,我去取牛奶时,顺路去看看。”
  “你去玩吧。千万别下河,听到了吗?”
  “嗯。我只是站在岸边瞧瞧。二个小时以后就回来。”
  “多玩一会儿吧。只要是跟柯贝内拉在一起,我就放心啦。”
  “我会跟他在一起的。妈,我给您关上窗户吧。”
  “好的,关上吧。天已经凉了。”
  焦班尼起身关好窗,收拾好碗筷和面包袋。然后迅速穿上鞋,说了一声“我去玩一个半小时就回来,”便消失在黑洞洞的夜色里。


  六点钟响过后,焦班尼将捡好的满满一箱铅字再次与手里的纸条核对一遍,这才把木箱抬到刚才那张台子前。里面的人不声不响地接过木箱,看了一眼,微微点了点头。
  焦班尼又向他鞠了一躬,走出屋子,来到柜台前。柜台里穿白衣的人同样默不作声地递给焦班尼一枚小银币。焦班尼顿时笑逐颜开,深深鞠了一躬,然后提起柜台下边的书包,飞快地跑到街上。他神气活现地吹着口哨,走进一家面包铺,买了一块面包和一包方糖,就一溜烟地跑了。

   三、家

 ジョバンニが勢(いきおい)よく帰って来たのは、ある裏町の小さな家でした。その三つならんだ入口の一番左側には空箱に紫(むらさき)いろのケールやアスパラガスが植えてあって小さな二つの窓には日覆(ひおお)いが下りたままになっていました。
「お母(っか)さん。いま帰ったよ。工合(ぐあい)悪くなかったの。」ジョバンニは靴をぬぎながら云いました。
「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は涼(すず)しくてね。わたしはずうっと工合がいいよ。」
 ジョバンニは玄関(げんかん)を上って行きますとジョバンニのお母さんがすぐ入口の室(へや)に白い巾(きれ)を被(かぶ)って寝(やす)んでいたのでした。ジョバンニは窓をあけました。
「お母さん。今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。」
「ああ、お前さきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから。」
「お母さん。姉さんはいつ帰ったの。」
「ああ三時ころ帰ったよ。みんなそこらをしてくれてね。」
「お母さんの牛乳は来ていないんだろうか。」
「来なかったろうかねえ。」
「ぼく行ってとって来よう。」
「あああたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり、姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。」
「ではぼくたべよう。」
 ジョバンニは窓のところからトマトの皿(さら)をとってパンといっしょにしばらくむしゃむしゃたべました。
「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。」
「あああたしもそう思う。けれどもおまえはどうしてそう思うの。」
「だって今朝の新聞に今年は北の方の漁は大へんよかったと書いてあったよ。」
「ああだけどねえ、お父さんは漁へ出ていないかもしれない。」
「きっと出ているよ。お父さんが監獄(かんごく)へ入るようなそんな悪いことをした筈(はず)がないんだ。この前お父さんが持ってきて学校へ寄贈(きぞう)した巨(おお)きな蟹(かに)の甲(こう)らだのとなかいの角だの今だってみんな標本室にあるんだ。六年生なんか授業のとき先生がかわるがわる教室へ持って行くよ。一昨年修学旅行で〔以下数文字分空白〕
「お父さんはこの次はおまえにラッコの上着をもってくるといったねえ。」
「みんながぼくにあうとそれを云うよ。ひやかすように云うんだ。」
「おまえに悪口を云うの。」
「うん、けれどもカムパネルラなんか決して云わない。カムパネルラはみんながそんなことを云うときは気の毒そうにしているよ。」
「あの人はうちのお父さんとはちょうどおまえたちのように小さいときからのお友達だったそうだよ。」
「ああだからお父さんはぼくをつれてカムパネルラのうちへもつれて行ったよ。あのころはよかったなあ。ぼくは学校から帰る途中(とちゅう)たびたびカムパネルラのうちに寄った。カムパネルラのうちにはアルコールラムプで走る汽車があったんだ。レールを七つ組み合せると円くなってそれに電柱や信号標もついていて信号標のあかりは汽車が通るときだけ青くなるようになっていたんだ。いつかアルコールがなくなったとき石油をつかったら、罐(かま)がすっかり煤(すす)けたよ。」
「そうかねえ。」
「いまも毎朝新聞をまわしに行くよ。けれどもいつでも家中まだしぃんとしているからな。」
「早いからねえ。」
「ザウエルという犬がいるよ。しっぽがまるで箒(ほうき)のようだ。ぼくが行くと鼻を鳴らしてついてくるよ。ずうっと町の角までついてくる。もっとついてくることもあるよ。今夜はみんなで烏瓜(からすうり)のあかりを川へながしに行くんだって。きっと犬もついて行くよ。」
「そうだ。今晩は銀河のお祭だねえ。」
「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ。」
「ああ行っておいで。川へははいらないでね。」
「ああぼく岸から見るだけなんだ。一時間で行ってくるよ。」
「もっと遊んでおいで。カムパネルラさんと一緒(いっしょ)なら心配はないから。」
「ああきっと一緒だよ。お母さん、窓をしめて置こうか。」
「ああ、どうか。もう涼しいからね」
 ジョバンニは立って窓をしめお皿やパンの袋を片附(かたづ)けると勢よく靴をはいて
「では一時間半で帰ってくるよ。」と云いながら暗い戸口を出ました。

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发表于 2006/09/17 | 编辑
五、气象标

 

  牧场后面有一座坡势徐缓的山岗。那黑黝黝的平坦山顶,在大熊星辉映下,显得愈发低矮,与大熊星连成一片。
  焦班尼穿过露水打湿的林间小径,急匆匆地上了山岗。在黑魁魁的草木和奇形怪状的灌木丛中,唯有那条小径,被星光照耀得十分清晰,亮晃晃的。草丛中小虫泛着萤光,草叶在月光下透明而青翠。焦班尼似乎觉得这些就像刚才大家手里拿的王瓜灯笼。
  绕过漆黑的松树和橡木林,天空一下子豁然开朗。焦班尼望见天河由南一直通向北方。同时可以看清山顶上的气象标。眼前是一片风铃草和野菊花,盛开怒放,香气袭人,如同梦境一般。
  一只小鸟叫着从山岗上掠过。
  焦班尼来到山顶气象标下面,气喘吁吁地躺倒在冰冷的草地上。
  镇里的灯光,如同黑暗的海底的一座水晶宫,光彩辉煌。既可以听见孩子们的歌声和口哨声,又可以听到隐隐约约传来的呼喊声。风声远去,小山岗的青草随风轻舞。焦班尼那汗水浸透的衣衫,此时已冰冷如石。他不禁打了个寒战。
  原野上传来车轮声响。一排排小火车的车窗,小巧、通明,车厢里熙熙攘攘的旅客们,削着苹果皮,有说有笑,千姿百态。……想到这儿,又一阵难忍的心酸涌上焦班尼心头,他把视线再次转向天空。
  可是,无论他怎么看,天空都不像白天老师说得那么空旷和毫无生气。何止如此,他甚至觉得,越看天空越像一片小树林,或是一片原野。焦班尼还发现,蓝色的天琴星竟然出现了三四个,一闪一闪地眨着眼。一会儿伸出一只脚,,会儿又缩了回去,最后终于伸得长长的,像蘑菇一样。就连山脚下的镇子,也如同一片茫茫的星河,又像是虚无飘渺的烟云。

   五、天気輪(てんきりん)の柱

 牧場のうしろはゆるい丘になって、その黒い平らな頂上は、北の大熊星(おおぐまぼし)の下に、ぼんやりふだんよりも低く連って見えました。\n ジョバンニは、もう露の降りかかった小さな林のこみちを、どんどんのぼって行きました。まっくらな草や、いろいろな形に見えるやぶのしげみの間を、その小さなみちが、一すじ白く星あかりに照らしだされてあったのです。草の中には、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、ある葉は青くすかし出され、ジョバンニは、さっきみんなの持って行った烏瓜(からすうり)のあかりのようだとも思いました。
 そのまっ黒な、松や楢(なら)の林を越(こ)えると、俄(にわ)かにがらんと空がひらけて、天(あま)の川(がわ)がしらしらと南から北へ亘(わた)っているのが見え、また頂(いただき)の、天気輪の柱も見わけられたのでした。つりがねそうか野ぎくかの花が、そこらいちめんに、夢(ゆめ)の中からでも薫(かお)りだしたというように咲き、鳥が一疋(ぴき)、丘の上を鳴き続けながら通って行きました。\n ジョバンニは、頂の天気輪の柱の下に来て、どかどかするからだを、つめたい草に投げました。
 町の灯は、暗(やみ)の中をまるで海の底のお宮のけしきのようにともり、子供らの歌う声や口笛、きれぎれの叫(さけ)び声もかすかに聞えて来るのでした。風が遠くで鳴り、丘の草もしずかにそよぎ、ジョバンニの汗(あせ)でぬれたシャツもつめたく冷されました。ジョバンニは町のはずれから遠く黒くひろがった野原を見わたしました。\\n そこから汽車の音が聞えてきました。その小さな列車の窓は一列小さく赤く見え、その中にはたくさんの旅人が、苹果(りんご)を剥(む)いたり、わらったり、いろいろな風にしていると考えますと、ジョバンニは、もう何とも云えずかなしくなって、また眼をそらに挙げました。
 あああの白いそらの帯がみんな星だというぞ。
 ところがいくら見ていても、そのそらはひる先生の云ったような、がらんとした冷いとこだとは思われませんでした。それどころでなく、見れば見るほど、そこは小さな林や牧場やらある野原のように考えられて仕方なかったのです。そしてジョバンニは青い琴(こと)の星が、三つにも四つにもなって、ちらちら瞬(またた)き、脚が何べんも出たり引っ込(こ)んだりして、とうとう蕈(きのこ)のように長く延びるのを見ました。またすぐ眼の下のまちまでがやっぱりぼんやりしたたくさんの星の集りか一つの大きなけむりかのように見えるように思いました。

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5楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
六、银河火车站

 

  焦班尼身后的气象标不知不觉变成了一座三角标,萤火虫似地一闪一灭。三角标越来越清晰,最后终于一动不动地巍然耸立在铁青色的空中原野上。三角标如同新煅冶的钢板,齐整整地挺立在天空原野中。
  就在这时,不知何处传来一种奇特的叫声:“银河火车站到了,银河火车站!”眼前顿时雪亮,犹如亿万只萤鱿之光同时变为化石,沉入整个天空一般。又如宝石商为了提高宝石价格而把宝石隐藏起来,却又不知被什么人打翻在地,恰如天女散花。焦班尼只觉眼前一片珠光宝气,不断用手揉着眼睛。
  当他清醒时,发现自己已坐在刚才那列咣当咣当作响的小火车上,车轮不断向前。没错,自己果真是坐在夜行轻便铁路线那亮着一排排[x]小灯泡的车厢里,正朝车窗外张望呢。车厢里蓝天鹅绒包着的座席,几乎空空如也。对面灰色的墙壁上,点着一盏雕成两朵牡丹花状的黄铜壁灯。
  紧挨着焦班尼前面的座位上,坐着一位高个子男孩,他的上衣湿淋淋的,正把头探出窗外,观赏沿路景色。焦班尼怎么看都觉得这孩子的肩膀部分十分熟悉,好像在哪儿见过。他忍不住想问个究竟。当他想从这边探出头去时,那孩子却突然先缩回了头,朝他望着。
  那不是别人,原来是柯贝内拉。焦班尼想问:柯贝内拉,原来你早就在这儿呀!
  可柯贝内拉却先开口了:
  “他们追了半天,可还是没有赶上这班列车。扎内利跑得最快,可还是晚了一步。”
  焦班尼心想:我们俩说好了一起出来的。可嘴上却说:“要不要等等他们?”
  柯贝内拉回答:
  “不用了。扎内利已经回家了,他父亲把他接走了。”
  说到这儿,柯贝内拉不知为何,脸色显得有些苍白,似乎什么地方很难受。焦班尼也好像不知把什么东西忘在什么地方了似的,怀着异样的心情沉默不语。过了一会儿,柯贝内拉望望窗外,神情一转,兴致勃勃地说:
  “糟了,我忘了带水壶。画册也忘了。不过不要紧的,天鹅站就要到了。我一见天鹅就着迷,无论她飞到哪里,我都能看到。”
  这时,柯贝内拉拿出一张圆盘板一样的地图,不停地转动着查看。那上面真有一条铁路线沿着白蒙蒙的天河左岸,通向正南方。那张地图实在是妙,黑夜般幽玄的盘面,一个个车站、三角标、泉水和森林,洒满五彩缤纷的光束。
  焦班尼仿佛在哪儿见过这张地图。
  “这张地图在哪儿买的?是黑耀石的吧?”焦班尼问。
  “在银河站站台上要的,你没要一张吗?”
  “啊,我刚才经过的车站就是银河火车站呀?我们现在的所在地,是这儿吧?”
  焦班尼指着标有“天鹅站”的北部问。
  “是的。你看,这河岸的光亮是月夜的银光吧?”焦班尼朝那儿望去,只见莹白、雪亮的银河河岸上,银空中的一片芒草,随风摇曳,掀起一片片波浪。
  “那不是月光。因为有银河辉映才显得像万顷琉璃。”焦班尼欣喜若狂地说着,笃笃地跺着地板,把头伸出窗外,吹起高昂的“星星索”口哨,并拚命想把调子拔高。焦班尼想仔细看看天河水。开始,他觉得那里一片朦胧,好像什么也没有。可后来当他用心看时,仿佛觉得那清澈的河水比玻璃更加晶莹,比氢气更加透明。有时也许是肉眼偶然的错觉,甚至可以看见天河水泛出一丝丝紫灿灿的涟调,如同万道彩虹,滚滚奔流。原野上到处都有放射着磷光的三角标,光彩夺目地耸立云端。三角标远小近大。
  远处的三角标呈现出醒目的橙色和[x];近处的则发出银白色的光芒,并有些朦胧的感觉。这些标志有三角形,也有四角形,还有闪电形和锁链形,千差万别,在原野里闪烁着光芒。焦班尼心怦怦地跳,他用力晃了晃头,想使自己清醒。与此同时,整个原野上那些色彩斑斓的三角标,也几乎同时叹息、呼吸,一闪一闪地摇晃、颤抖。
  “我真的来到天上的原野上了。”焦班尼感叹地说。
  “奇怪,这列火车怎么不用烧煤?”焦班尼伸出左手,向前方探试着问。
  “是用酒精或电气吧?”柯贝内拉说。
  远处不知何方烟霭中传来一阵像大提琴一样嗡嗡的音响,仿佛在回答这一问题:
  “这里的火车,不用蒸汽,也不用电。因为它理所当然应该驶动,所以才驶动。咣当咣当,你们觉得它在发出声响,那是因为你们以前一直听惯了火车的音响是这样的。”
  “这种声音,我好像听过好多次。”
  “我也在林子里和河边听过。”
  咣当咣当,那列漂亮的小火车随着天空的芒草波浪飘荡,在天河流水中,在三角点的银光里,勇往直前地行进。
  “啊,龙胆花开了,已经进入深秋了。”柯贝内拉指着窗外叹息。
  铁轨两旁低矮的结缕草中,盛开着一簇簇如月长石雕刻的紫色龙胆花,婀娜多姿。
  “我跳下去,摘它一朵,然后再上来。”焦班尼心花怒放地说。
  “已经早过去了,来不及啦!”
  柯贝内拉话还没落,又一花团锦簇的龙胆花也顽皮地闪过去。
  随后,一片片黄蕊的龙胆花冠如雨点般前呼后拥地汹涌而来,又从眼前逝去。
  三角标的行列,忽而如烟雾绕绕,忽而闪闪耀眼,最后露出熠熠光芒……


   六、銀河ステーション

 そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しばらく蛍(ほたる)のように、ぺかぺか消えたりともったりしているのを見ました。それはだんだんはっきりして、とうとうりんとうごかないようになり、濃(こ)い鋼青(こうせい)のそらの野原にたちました。いま新らしく灼(や)いたばかりの青い鋼(はがね)の板のような、そらの野原に、まっすぐにすきっと立ったのです。
 するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云(い)う声がしたと思うといきなり眼の前が、ぱっと明るくなって、まるで億万の蛍烏賊(ほたるいか)の火を一ぺんに化石させて、そら中に沈(しず)めたという工合(ぐあい)、またダイアモンド会社で、ねだんがやすくならないために、わざと穫(と)れないふりをして、かくして置いた金剛石(こんごうせき)を、誰(たれ)かがいきなりひっくりかえして、ばら撒(ま)いたという風に、眼の前がさあっと明るくなって、ジョバンニは、思わず何べんも眼を擦(こす)ってしまいました。\n 気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗っている小さな列車が走りつづけていたのでした。ほんとうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座(すわ)っていたのです。車室の中は、青い天蚕絨(びろうど)を張った腰掛(こしか)けが、まるでがら明きで、向うの鼠(ねずみ)いろのワニスを塗った壁(かべ)には、真鍮(しんちゅう)の大きなぼたんが二つ光っているのでした。\n すぐ前の席に、ぬれたようにまっ黒な上着を着た、せいの高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気が付きました。そしてそのこどもの肩(かた)のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、そう思うと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔を出そうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。\n それはカムパネルラだったのです。
 ジョバンニが、カムパネルラ、きみは前からここに居たのと云おうと思ったとき、カムパネルラが
「みんなはねずいぶん走ったけれども遅(おく)れてしまったよ。ザネリもね、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」と云いました。
 ジョバンニは、(そうだ、ぼくたちはいま、いっしょにさそって出掛けたのだ。)とおもいながら、
「どこかで待っていようか」と云いました。するとカムパネルラは
「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎(むか)いにきたんだ。」
 カムパネルラは、なぜかそう云いながら、少し顔いろが青ざめて、どこか苦しいというふうでした。するとジョバンニも、なんだかどこかに、何か忘れたものがあるというような、おかしな気持ちがしてだまってしまいました。
 ところがカムパネルラは、窓から外をのぞきながら、もうすっかり元気が直って、勢(いきおい)よく云いました。
「ああしまった。ぼく、水筒(すいとう)を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構わない。もうじき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川の遠くを飛んでいたって、ぼくはきっと見える。」そして、カムパネルラは、円い板のようになった地図を、しきりにぐるぐるまわして見ていました。まったくその中に、白くあらわされた天の川の左の岸に沿って一条の鉄道線路が、南へ南へとたどって行くのでした。そしてその地図の立派なことは、夜のようにまっ黒な盤(ばん)の上に、一一の停車場や三角標(さんかくひょう)、泉水や森が、青や橙(だいだい)や緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。ジョバンニはなんだかその地図をどこかで見たようにおもいました。\n「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」\\n ジョバンニが云いました。
「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」
「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」
 ジョバンニは、白鳥と書いてある停車場のしるしの、すぐ北を指(さ)しました。
「そうだ。おや、あの河原(かわら)は月夜だろうか。」
 そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。
「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ。」ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快(ゆかい)になって、足をこつこつ鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛(くちぶえ)を吹(ふ)きながら一生けん命延びあがって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼(め)の加減か、ちらちら紫(むらさき)いろのこまかな波をたてたり、虹(にじ)のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光(りんこう)の三角標が、うつくしく立っていたのです。遠いものは小さく、近いものは大きく、遠いものは橙や黄いろではっきりし、近いものは青白く少しかすんで、或(ある)いは三角形、或いは四辺形、あるいは電(いなずま)や鎖(くさり)の形、さまざまにならんで、野原いっぱい光っているのでした。ジョバンニは、まるでどきどきして、頭をやけに振(ふ)りました。するとほんとうに、そのきれいな野原中の青や橙や、いろいろかがやく三角標も、てんでに息をつくように、ちらちらゆれたり顫(ふる)えたりしました。
「ぼくはもう、すっかり天の野原に来た。」ジョバンニは云いました。
「それにこの汽車石炭をたいていないねえ。」ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながら云いました。
「アルコールか電気だろう。」カムパネルラが云いました。
 ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、そらのすすきの風にひるがえる中を、天の川の水や、三角点の青じろい微光(びこう)の中を、どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」カムパネルラが、窓の外を指さして云いました。
 線路のへりになったみじかい芝草(しばくさ)の中に、月長石ででも刻(きざ)まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」ジョバンニは胸を躍(おど)らせて云いました。\n「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
 カムパネルラが、そう云ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
 と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな底をもったりんどうの花のコップが、湧(わ)くように、雨のように、眼の前を通り、三角標の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです。

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主题

303

存在感

108

活跃日
 6 

SOS团三星级★★★

6楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
七、北十字星与普利茅斯海岸

 

  “啊,妈妈,您能原谅我吗?”
  柯贝内拉突然垂头丧气,急切切地小声说。
  焦班尼心想:是呀,我母亲也在那遥远的、如同橙色灰尘般渺小的三角标那儿,正思念着我吧?
  但他没有说出口来。
  “如果妈妈能够获得真正的幸福,那我就是上刀山下火海也在所不辞。可究竟什么才是妈妈的真正幸福呢?”柯贝内拉似乎在竭力抑制,使自己不哭出来。
  “你妈妈又没什么不好。”焦班尼惊愕地说。
  “我也不太清楚。但如果一个人真正做了好事,他就应该感到至高无上的幸福吧?所以我想妈妈会原谅我的。”柯贝内拉好像拿定了主意。
  车厢里豁然明亮起来。定睛看去,河水无声无息地在灿烂的银河河床上流淌,河床上洒满宝石、露珠和一切美丽的东西。河流正中央,有一座沐浴在银色佛光中的岛屿,岛屿最高处的平坦地面上,竖立着一个光明、皓洁的十字架,那简直如同用北极冻结的冰云铸造而成,披戴着一层晶莹的金色佛光,静穆、永恒地仁立在那里。
  “哈利路亚,哈利路亚!”车厢上下一片赞美歌的声浪。回头望去,只见车厢里的全体旅客都恭恭敬敬地拉下衣褶,肃然起立。有人胸前抱着黑色封面的圣经,也有人脖子上戴着水晶佛珠,个个十分虔诚地合拢双手,向十字架方向祷告。
  柯贝内拉和焦班尼二人不约而同地站立起来,柯贝内拉丰满的脸颊,洋溢着苹果般的光泽,美丽动人。
  不一会儿,岛屿和十字架渐渐转向列车行驶的后方。
  对岸也出现银光闪闪的烟霭,不时可以望见芒草随风起伏。
  刚才那银白色还是朦胧含糊,仿佛已奄奄一息。可一会儿又出现许多龙胆花,在草浪里若隐若现,看起来像一团温柔的磷火。
  那是一瞬之间发生的景象。天河与列车之间的大地被芒草丛覆盖遮掩,天鹅岛在列车后面微微闪露了两下,立刻消失在远方,变得很小很小,宛如画上的一个小点。芒草又在沙沙作响,天鹅岛终于消失得无影无踪。焦班尼后座上不知何时上来一位身材修长、头技黑巾的天主教修女。她垂着两只碧绿的圆眼,渴望再次听到那边传来的话语声。旅客们规规矩矩地回到自己座位上。焦班尼和柯贝内拉二人胸中涌起一种近似悲哀的、从未有过的情感,他俩不自觉地使用不同的语言悄声交谈。
  “天鹅站就要到了!”
  “十一点整准时到达。”
  绿色信号灯与白蒙蒙的灯柱开始在车窗外闪过,道岔前那硫黄般浑浊的灯光也从窗下通过。列车渐渐放慢了速度,不久就望见站台上一排排温馨、整齐的灯光,灯光不断扩大、伸展。两人面对的车窗刚好对准天鹅车站的大时钟时,列车停下了。
  凉爽的秋日,钟表盘上的两根兰色指针,正指向十一时。人们一下于都下去了,车厢里空空荡荡。
  “停车二十分钟。”钟表下方显示出指示。
  “我们也下去看看吧!”焦班尼建议。
  “好吧,下去看看。”两人一齐冲出车门,向检票口跑去。
  可是检票口处只亮着一盏紫红色电灯,不见人影。他们四处张望,竟连站长和搬运工的影儿也没有。
  两人来到站前一块由水晶雕刻而成的银杏树环绕的小广场上。
  一条宽广的大道,一直通向银河的青光之中。
  刚才下车的那些旅客,不知都去了哪里,空无一人。
  两人并肩顺着那条白茫茫的大道向前走。他们身影恰似屋子里的两根柱子,而这个屋子四面是玻璃;影子又如车轮的辐条,无数条辐条射向四面八方。不一会儿,两人来到从车上望见的那片幽美的河岸。
  柯贝内拉抓起一把洁净美丽的沙子,在手掌里摊开,用手指沙沙地翻动。
  “这些沙子都是水晶,每粒水晶里面都有一小股火焰在燃烧。”他梦呓般地说。
  “好像是。”焦班尼想起好像在哪儿学过,含含糊糊地回答。
  岸边的小石子璀璨、晶莹,的确像水晶和黄玉或是孔雀褶曲的化身,又像是由剑峰散发云雾般银光的刚玉。焦班尼跑到岸边,将手浸入水中。奇怪的是,那银河水虽比氢气还要透明、但确确实实在流动。两人手腕浸水处,浮现出淡淡的水银色,浪花拍打手腕,泛起美丽的磷光,金灿灿的。
  顺着河岸向上游望去,只见长满芒草的山崖下,白色岩石如同平坦、宽阔的运动场,沿着河流向前伸展。岩石上隐约出现五六个人影,似乎在挖掘或填埋什么东西,一会儿站起,一会儿蹲下,时而又有什么明晃晃的工具泛起白光。
  “去看看!”两人异口同声地说着,朝那边奔去。白色岩石的入口处,立着一块光滑的陶瓷标牌,上面写道:“普利茅斯海岸”。对面河岸上,到处插满细铁栏杆,还设置了许多精美的长木椅。
  “哎,你看这东西好怪呀!”柯贝内拉好奇地站住了,从岩石上拾起一个黑长尖细的核桃。
  “是核桃。你看,这么多。这不是河水冲来的,原来就在岩石里。”
  “真大呀,这核桃比一般的起码大一倍,你看这个还是完好无缺的。”
  “我们快过去吧,他们肯定在挖什么宝贝呢!”
  两人手拿黑核桃,又向那伙人那儿靠拢。左前方河滩上,波浪如同温柔的闪电一闪一闪地打来;右前方崖顶,一片如银子和贝壳雕塑的芒草穗随风翻舞。
  两人走近一看,一位学者风度的高个子男人,戴着一副深度近视眼镜,脚登一双高筒雨靴,一面匆匆忙忙地往笔记本上记着什么,一面埋头指挥三位挥舞着洋镐和铁锹的助手挖掘。
  “千万不可损伤那个隆起的地方,用铁锹铲,铁锹!再离远些挖。不行不行,不能乱来!”
  再凑近一看,只见洁白松软的岩石中,横卧着一具巨兽的白骨,已经有一大半露在外面。仔细观察便可发现,有十几块四四方方的岩石,上面留有两只蹄子印,整整齐齐地摆在那里,并标有号码。
  “你们是来参观的吗?”大学者模样的人,扶正了眼镜,望着两人问。
  “你们二定发现了许多核桃吧?这些核桃是,嗯……,粗略地估计,大约是一百二十万年前的吧。算是最新的了。这里一百二十万年以前,也就是地质时代的新第三世纪末,曾经是一片汪洋,这下面可以挖掘出大量的贝壳化石。现在河水流动的地方,古时候盐水潮曾经时涨时落。这具野兽的骨架嘛,这种野兽叫‘波斯’。喂,那里不能用镐刨!要用凿子小心地凿。‘波斯’相当于现在牛的祖先,以前这里到处都是这种动物。”
  “您要收集这些做标本吗?”
  “不,是用来考证的。以我们的观点分析,这一带的地盘既厚又坚固,有很多证据可以证明是大约一百二十万年前形成的。
  但我们还想从其它角度来分析,研究和探索这里以前是否究竟是这样的地层?还是原来这里只有风和水?或者是无边的天空?听懂了吗?不过,……你怎么又用铁锹,那下面埋的是肋骨,你难道还不知道吗?”
  大学者急忙跑过去。
  “时间到了,我们得回去啦。”柯贝内拉看着地图和手表催促说。
  “那我们就告辞了。”焦班尼恭恭敬敬地给大学者行了个礼。
  “噢,那就再见啦!”大学者又忙着继续指挥挖掘工作。
  两人担心误了火车,便向火车站飞奔。他们人跑起来如疾风一般,既不气喘,也不腿酸。
  焦班尼心想:如果真的能永远跑得这么快,那么跑遍世界也不成问题。
  两人跑过刚才走过的河岸,渐渐望见检票口明亮的灯光。转眼之间,两人已坐在车厢原来的座位上,从车窗向刚才跑来的方向眺望。

   七、北十字とプリオシン海岸

「おっかさんは、ぼくをゆるして下さるだろうか。」
 いきなり、カムパネルラが、思い切ったというように、少しどもりながら、急(せ)きこんで云(い)いました。
 ジョバンニは、
(ああ、そうだ、ぼくのおっかさんは、あの遠い一つのちりのように見える橙(だいだい)いろの三角標のあたりにいらっしゃって、いまぼくのことを考えているんだった。)と思いながら、ぼんやりしてだまっていました。
「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸(さいわい)になるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。
「きみのおっかさんは、なんにもひどいことないじゃないの。」ジョバンニはびっくりして叫(さけ)びました。
「ぼくわからない。けれども、誰(たれ)だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。」カムパネルラは、なにかほんとうに決心しているように見えました。
 俄(にわ)かに、車のなかが、ぱっと白く明るくなりました。見ると、もうじつに、金剛石(こんごうせき)や草の露(つゆ)やあらゆる立派さをあつめたような、きらびやかな銀河の河床(かわどこ)の上を水は声もなくかたちもなく流れ、その流れのまん中に、ぼうっと青白く後光の射(さ)した一つの島が見えるのでした。その島の平らないただきに、立派な眼もさめるような、白い十字架(じゅうじか)がたって、それはもう凍(こお)った北極の雲で鋳(い)たといったらいいか、すきっとした金いろの円光をいただいて、しずかに永久に立っているのでした。
「ハルレヤ、ハルレヤ。」前からもうしろからも声が起りました。ふりかえって見ると、車室の中の旅人たちは、みなまっすぐにきもののひだを垂れ、黒いバイブルを胸にあてたり、水晶(すいしょう)の珠数(じゅず)をかけたり、どの人もつつましく指を組み合せて、そっちに祈(いの)っているのでした。思わず二人もまっすぐに立ちあがりました。カムパネルラの頬(ほほ)は、まるで熟した苹果(りんご)のあかしのようにうつくしくかがやいて見えました。\n そして島と十字架とは、だんだんうしろの方へうつって行きました。
 向う岸も、青じろくぽうっと光ってけむり、時々、やっぱりすすきが風にひるがえるらしく、さっとその銀いろがけむって、息でもかけたように見え、また、たくさんのりんどうの花が、草をかくれたり出たりするのは、やさしい狐火(きつねび)のように思われました。
 それもほんのちょっとの間、川と汽車との間は、すすきの列でさえぎられ、白鳥の島は、二度ばかり、うしろの方に見えましたが、じきもうずうっと遠く小さく、絵のようになってしまい、またすすきがざわざわ鳴って、とうとうすっかり見えなくなってしまいました。ジョバンニのうしろには、いつから乗っていたのか、せいの高い、黒\いかつぎをしたカトリック風の尼(あま)さんが、まん円な緑の瞳(ひとみ)を、じっとまっすぐに落して、まだ何かことばか声かが、そっちから伝わって来るのを、虔(つつし)んで聞いているというように見えました。旅人たちはしずかに席に戻(もど)り、二人も胸いっぱいのかなしみに似た新らしい気持ちを、何気なくちがった語(ことば)で、そっと談(はな)し合ったのです。
「もうじき白鳥の停車場だねえ。」
「ああ、十一時かっきりには着くんだよ。」
 早くも、シグナルの緑の燈(あかり)と、ぼんやり白い柱とが、ちらっと窓のそとを過ぎ、それから硫黄(いおう)のほのおのようなくらいぼんやりした転てつ機の前のあかりが窓の下を通り、汽車はだんだんゆるやかになって、間もなくプラットホームの一列の電燈が、うつくしく規則正しくあらわれ、それがだんだん大きくなってひろがって、二人は丁度白鳥停車場の、大きな時計の前に来てとまりました。
 さわやかな秋の時計の盤面(ダイアル)には、青く灼(や)かれたはがねの二本の針が、くっきり十一時を指しました。みんなは、一ぺんに下りて、車室の中はがらんとなってしまいました。
〔二十分停車〕と時計の下に書いてありました。
「ぼくたちも降りて見ようか。」ジョバンニが云いました。
「降りよう。」
 二人は一度にはねあがってドアを飛び出して改札口(かいさつぐち)へかけて行きました。ところが改札口には、明るい紫(むらさき)がかった電燈が、一つ点(つ)いているばかり、誰(たれ)も居ませんでした。そこら中を見ても、駅長や赤帽(あかぼう)らしい人の、影(かげ)もなかったのです。
 二人は、停車場の前の、水晶細工のように見える銀杏(いちょう)の木に囲まれた、小さな広場に出ました。そこから幅(はば)の広いみちが、まっすぐに銀河の青光の中へ通っていました。
 さきに降りた人たちは、もうどこへ行ったか一人も見えませんでした。二人がその白い道を、肩(かた)をならべて行きますと、二人の影は、ちょうど四方に窓のある室(へや)の中の、二本の柱の影のように、また二つの車輪の輻(や)のように幾本(いくほん)も幾本も四方へ出るのでした。そして間もなく、あの汽車から見えたきれいな河原(かわら)に来ました。
 カムパネルラは、そのきれいな砂を一つまみ、掌(てのひら)にひろげ、指できしきしさせながら、夢(ゆめ)のように云っているのでした。
「この砂はみんな水晶だ。中で小さな火が燃えている。」
「そうだ。」どこでぼくは、そんなこと習ったろうと思いながら、ジョバンニもぼんやり答えていました。
 河原の礫(こいし)は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉(トパース)や、またくしゃくしゃの皺曲(しゅうきょく)をあらわしたのや、また稜(かど)から霧(きり)のような青白い光を出す鋼玉やらでした。ジョバンニは、走ってその渚(なぎさ)に行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮(う)いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光(りんこう)をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。
 川上の方を見ると、すすきのいっぱいに生えている崖(がけ)の下に、白い岩が、まるで運動場のように平らに川に沿って出ているのでした。そこに小さな五六人の人かげが、何か掘(ほ)り出すか埋めるかしているらしく、立ったり屈(かが)んだり、時々なにかの道具が、ピカッと光ったりしました。\n「行ってみよう。」二人は、まるで一度に叫んで、そっちの方へ走りました。その白い岩になった処(ところ)の入口に、
〔プリオシン海岸〕という、瀬戸物(せともの)のつるつるした標札が立って、向うの渚には、ところどころ、細い鉄の欄干(らんかん)も植えられ、木製のきれいなベンチも置いてありました。
「おや、変なものがあるよ。」カムパネルラが、不思議そうに立ちどまって、岩から黒い細長いさきの尖(とが)ったくるみの実のようなものをひろいました。\n「くるみの実だよ。そら、沢山(たくさん)ある。流れて来たんじゃない。岩の中に入ってるんだ。」
「大きいね、このくるみ、倍あるね。こいつはすこしもいたんでない。」
「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」
 二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。左手の渚には、波がやさしい稲妻(いなずま)のように燃えて寄せ、右手の崖には、いちめん銀や貝殻(かいがら)でこさえたようなすすきの穂(ほ)がゆれたのです。\n だんだん近付いて見ると、一人のせいの高い、ひどい近眼鏡をかけ、長靴(ながぐつ)をはいた学者らしい人が、手帳に何かせわしそうに書きつけながら、鶴嘴(つるはし)をふりあげたり、スコープをつかったりしている、三人の助手らしい人たちに夢中(むちゅう)でいろいろ指図をしていました。
「そこのその突起(とっき)を壊(こわ)さないように。スコープを使いたまえ、スコープを。おっと、も少し遠くから掘って。いけない、いけない。なぜそんな乱暴をするんだ。」
 見ると、その白い柔(やわ)らかな岩の中から、大きな大きな青じろい獣(けもの)の骨が、横に倒(たお)れて潰(つぶ)れたという風になって、半分以上掘り出されていました。そして気をつけて見ると、そこらには、蹄(ひづめ)の二つある足跡(あしあと)のついた岩が、四角に十ばかり、きれいに切り取られて番号がつけられてありました。
「君たちは参観かね。」その大学士らしい人が、眼鏡(めがね)をきらっとさせて、こっちを見て話しかけました。
「くるみが沢山あったろう。それはまあ、ざっと百二十万年ぐらい前のくるみだよ。ごく新らしい方さ。ここは百二十万年前、第三紀のあとのころは海岸でね、この下からは貝がらも出る。いま川の流れているとこに、そっくり塩水が寄せたり引いたりもしていたのだ。このけものかね、これはボスといってね、おいおい、そこつるはしはよしたまえ。ていねいに鑿(のみ)でやってくれたまえ。ボスといってね、いまの牛の先祖で、昔(むかし)はたくさん居たさ。」
「標本にするんですか。」
「いや、証明するに要(い)るんだ。ぼくらからみると、ここは厚い立派な地層で、百二十万年ぐらい前にできたという証拠(しょうこ)もいろいろあがるけれども、ぼくらとちがったやつからみてもやっぱりこんな地層に見えるかどうか、あるいは風か水やがらんとした空かに見えやしないかということなのだ。わかったかい。けれども、おいおい。そこもスコープではいけない。そのすぐ下に肋骨(ろっこつ)が埋もれてる筈(はず)じゃないか。」大学士はあわてて走って行きました。
「もう時間だよ。行こう。」カムパネルラが地図と腕時計(うでどけい)とをくらべながら云いました。
「ああ、ではわたくしどもは失礼いたします。」ジョバンニは、ていねいに大学士におじぎしました。
「そうですか。いや、さよなら。」大学士は、また忙(いそ)がしそうに、あちこち歩きまわって監督(かんとく)をはじめました。二人は、その白い岩の上を、一生けん命汽車におくれないように走りました。そしてほんとうに、風のように走れたのです。息も切れず膝(ひざ)もあつくなりませんでした。
 こんなにしてかけるなら、もう世界中だってかけれると、ジョバンニは思いました。
 そして二人は、前のあの河原を通り、改札口の電燈がだんだん大きくなって、間もなく二人は、もとの車室の席に座(すわ)って、いま行って来た方を、窓から見ていました。

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SOS团三星级★★★

7楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
八、捕鸟人

 

  “这儿有人吗?”
  二人身后传来一个嘶哑而又亲切的男人声音。
  这是一个身穿破旧外套的人,一个大白布包裹搭在两个肩头,留着红胡须,背有些驼。
  “没有人。”焦班尼耸了耸肩,作为打招呼。那人胡梢略带微笑,把行李轻轻放到行李架上。焦班尼心头猛然涌起一阵说不出的心酸和悲伤,他默默地注视着正面的大钟。远处传来一声清脆的哨音,火车缓缓启动。柯贝内拉不住地观察着车厢的天花板,一只独角仙落在电灯上,投下一条巨大的阴影。红胡子像老朋友似地含笑注视着焦班尼和柯贝内拉的一举一动。火车速度逐渐加快,芒草与河水交替从车窗流过。
  红胡子畏畏缩缩地向他俩询问:
  “你们二位,去哪儿呀?”
  “想到哪儿就到哪儿。”焦班尼略有些难为情地回答。
  “那太好了。这列火车实际上哪儿都可以去。”
  “你去哪儿呀?”柯贝内拉突然气冲冲地冲那人问。焦班尼愣了一下,不禁笑了起来。这时,坐在对面的一个头戴尖顶帽、腰挂一条大钥匙的男人,也望着这边笑了。柯贝内拉也不由得红着脸笑了起来。红胡子虽然没有生气,但面部有些痉挛,紧张地说:
  “我马上就下车,我是靠捕鸟谋生的。”
  “捕什么鸟?”
  “仙鹤、大雁,还有白鹭和天鹅。”
  “仙鹤多吗?”
  “多得是。仙鹤一直都在叫呢,你没听到吗?”
  “没有啊。”
  “现在还在叫呢,你仔细听。”
  他们俩竖起耳朵,仔细倾听。从咣当咣当的车轮声和风吹芒草声浪之间,传来一阵如泉水涌流的声响。
  “你是怎么捉仙鹤的呢?”
  “你是说仙鹤呢,还是白鹭?”
  “先说白鹭吧。”焦班尼觉得随便说什么都行,敷衍着说。
  “捉这家伙最容易不过了。白鹭是天河的白沙凝固而成的。
  她们终究是要回到河边来的,只要阍诤影渡下穹


   八、鳥を捕(と)る人

「ここへかけてもようございますか。」
 がさがさした、けれども親切そうな、大人の声が、二人のうしろで聞えました。
 それは、茶いろの少しぼろぼろの外套(がいとう)を着て、白い巾(きれ)でつつんだ荷物を、二つに分けて肩に掛(か)けた、赤髯(あかひげ)のせなかのかがんだ人でした。
「ええ、いいんです。」ジョバンニは、少し肩をすぼめて挨拶(あいさつ)しました。その人は、ひげの中でかすかに微笑(わら)いながら荷物をゆっくり網棚(あみだな)にのせました。ジョバンニは、なにか大へんさびしいようなかなしいような気がして、だまって正面の時計を見ていましたら、ずうっと前の方で、硝子(ガラス)の笛(ふえ)のようなものが鳴りました。汽車はもう、しずかにうごいていたのです。カムパネルラは、車室の天井(てんじょう)を、あちこち見ていました。その一つのあかりに黒い甲虫(かぶとむし)がとまってその影が大きく天井にうつっていたのです。赤ひげの人は、なにかなつかしそうにわらいながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ていました。汽車はもうだんだん早くなって、すすきと川と、かわるがわる窓の外から光りました。\\n 赤ひげの人が、少しおずおずしながら、二人に訊(き)きました。
「あなた方は、どちらへいらっしゃるんですか。」
「どこまでも行くんです。」ジョバンニは、少しきまり悪そうに答えました。
「それはいいね。この汽車は、じっさい、どこまででも行きますぜ。」
「あなたはどこへ行くんです。」カムパネルラが、いきなり、喧嘩(けんか)のようにたずねましたので、ジョバンニは、思わずわらいました。すると、向うの席に居た、尖った帽子をかぶり、大きな鍵(かぎ)を腰(こし)に下げた人も、ちらっとこっちを見てわらいましたので、カムパネルラも、つい顔を赤くして笑いだしてしまいました。ところがその人は別に怒(おこ)ったでもなく、頬(ほほ)をぴくぴくしながら返事しました。
「わっしはすぐそこで降ります。わっしは、鳥をつかまえる商売でね。」
「何鳥ですか。」
「鶴や雁(がん)です。さぎも白鳥もです。」
「鶴はたくさんいますか。」
「居ますとも、さっきから鳴いてまさあ。聞かなかったのですか。」
「いいえ。」
「いまでも聞えるじゃありませんか。そら、耳をすまして聴(き)いてごらんなさい。」
 二人は眼(め)を挙げ、耳をすましました。ごとごと鳴る汽車のひびきと、すすきの風との間から、ころんころんと水の湧(わ)くような音が聞えて来るのでした。
「鶴、どうしてとるんですか。」
「鶴ですか、それとも鷺(さぎ)ですか。」
「鷺です。」ジョバンニは、どっちでもいいと思いながら答えました。
「そいつはな、雑作(ぞうさ)ない。さぎというものは、みんな天の川の砂が凝(こご)って、ぼおっとできるもんですからね、そして始終川へ帰りますからね、川原で待っていて、鷺がみんな、脚(あし)をこういう風にして下りてくるとこを、そいつが地べたへつくかつかないうちに、ぴたっと押(おさ)えちまうんです。するともう鷺は、かたまって安心して死んじまいます。あとはもう、わかり切ってまさあ。押し葉にするだけです。」
「鷺を押し葉にするんですか。標本ですか。」
「標本じゃありません。みんなたべるじゃありませんか。」
「おかしいねえ。」カムパネルラが首をかしげました。
「おかしいも不審(ふしん)もありませんや。そら。」その男は立って、網棚から包みをおろして、手ばやくくるくると解きました。
「さあ、ごらんなさい。いまとって来たばかりです。」
「ほんとうに鷺だねえ。」二人は思わず叫(さけ)びました。まっ白な、あのさっきの北の十字架(じゅうじか)のように光る鷺のからだが、十ばかり、少しひらべったくなって、黒い脚をちぢめて、浮彫(うきぼり)のようにならんでいたのです。\\n「眼をつぶってるね。」カムパネルラは、指でそっと、鷺の三日月がたの白い瞑(つぶ)った眼にさわりました。頭の上の槍(やり)のような白い毛もちゃんとついていました。
「ね、そうでしょう。」鳥捕りは風呂敷(ふろしき)を重ねて、またくるくると包んで紐(ひも)でくくりました。誰(たれ)がいったいここらで鷺なんぞ喰(た)べるだろうとジョバンニは思いながら訊きました。
「鷺はおいしいんですか。」
「ええ、毎日注文があります。しかし雁(がん)の方が、もっと売れます。雁の方がずっと柄(がら)がいいし、第一手数がありませんからな。そら。」鳥捕りは、また別の方の包みを解きました。すると黄と青じろとまだらになって、なにかのあかりのようにひかる雁が、ちょうどさっきの鷺のように、くちばしを揃(そろ)えて、少し扁(ひら)べったくなって、ならんでいました。
「こっちはすぐ喰べられます。どうです、少しおあがりなさい。」鳥捕りは、黄いろな雁の足を、軽くひっぱりました。するとそれは、チョコレートででもできているように、すっときれいにはなれました。
「どうです。すこしたべてごらんなさい。」鳥捕りは、それを二つにちぎってわたしました。ジョバンニは、ちょっと喰べてみて、(なんだ、やっぱりこいつはお菓子(かし)だ。チョコレートよりも、もっとおいしいけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。この男は、どこかそこらの野原の菓子屋(かしや)だ。けれどもぼくは、このひとをばかにしながら、この人のお菓子をたべているのは、大へん気の毒だ。)とおもいながら、やっぱりぽくぽくそれをたべていました。
「も少しおあがりなさい。」鳥捕りがまた包みを出しました。ジョバンニは、もっとたべたかったのですけれども、
「ええ、ありがとう。」と云(い)って遠慮(えんりょ)しましたら、鳥捕りは、こんどは向うの席の、鍵(かぎ)をもった人に出しました。
「いや、商売ものを貰(もら)っちゃすみませんな。」その人は、帽子(ぼうし)をとりました。
「いいえ、どういたしまして。どうです、今年の渡(わた)り鳥(どり)の景気は。」
「いや、すてきなもんですよ。一昨日(おととい)の第二限ころなんか、なぜ燈台の灯(ひ)を、規則以外に間〔一字分空白〕させるかって、あっちからもこっちからも、電話で故障が来ましたが、なあに、こっちがやるんじゃなくて、渡り鳥どもが、まっ黒にかたまって、あかしの前を通るのですから仕方ありませんや。わたしぁ、べらぼうめ、そんな苦情は、おれのとこへ持って来たって仕方がねえや、ばさばさのマントを着て脚と口との途方(とほう)もなく細い大将へやれって、斯(こ)う云ってやりましたがね、はっは。」\\n すすきがなくなったために、向うの野原から、ぱっとあかりが射(さ)して来ました。
「鷺の方はなぜ手数なんですか。」カムパネルラは、さっきから、訊こうと思っていたのです。
「それはね、鷺を喰べるには、」鳥捕りは、こっちに向き直りました。
「天の川の水あかりに、十日もつるして置くかね、そうでなけぁ、砂に三四日うずめなけぁいけないんだ。そうすると、水銀がみんな蒸発して、喰べられるようになるよ。」
「こいつは鳥じゃない。ただのお菓子でしょう。」やっぱりおなじことを考えていたとみえて、カムパネルラが、思い切ったというように、尋(たず)ねました。鳥捕りは、何か大へんあわてた風で、
「そうそう、ここで降りなけぁ。」と云いながら、立って荷物をとったと思うと、もう見えなくなっていました。
「どこへ行ったんだろう。」
 二人は顔を見合せましたら、燈台守は、にやにや笑って、少し伸(の)びあがるようにしながら、二人の横の窓の外をのぞきました。二人もそっちを見ましたら、たったいまの鳥捕りが、黄いろと青じろの、うつくしい燐光(りんこう)を出す、いちめんのかわらははこぐさの上に立って、まじめな顔をして両手をひろげて、じっとそらを見ていたのです。
「あすこへ行ってる。ずいぶん奇体(きたい)だねえ。きっとまた鳥をつかまえるとこだねえ。汽車が走って行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」と云った途端(とたん)、がらんとした桔梗(ききょう)いろの空から、さっき見たような鷺が、まるで雪の降るように、ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに舞(ま)いおりて来ました。するとあの鳥捕りは、すっかり注文通りだというようにほくほくして、両足をかっきり六十度に開いて立って、鷺のちぢめて降りて来る黒い脚を両手で片(かた)っ端(ぱし)から押えて、布の袋(ふくろ)の中に入れるのでした。すると鷺は、蛍(ほたる)のように、袋の中でしばらく、青くぺかぺか光ったり消えたりしていましたが、おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、眼をつぶるのでした。ところが、つかまえられる鳥よりは、つかまえられないで無事に天(あま)の川(がわ)の砂の上に降りるものの方が多かったのです。それは見ていると、足が砂へつくや否(いな)や、まるで雪の融(と)けるように、縮(ちぢ)まって扁(ひら)べったくなって、間もなく熔鉱炉(ようこうろ)から出た銅の汁(しる)のように、砂や砂利(じゃり)の上にひろがり、しばらくは鳥の形が、砂についているのでしたが、それも二三度明るくなったり暗くなったりしているうちに、もうすっかりまわりと同じいろになってしまうのでした。\n 鳥捕りは二十疋(ぴき)ばかり、袋に入れてしまうと、急に両手をあげて、兵隊が鉄砲弾(てっぽうだま)にあたって、死ぬときのような形をしました。と思ったら、もうそこに鳥捕りの形はなくなって、却(かえ)って、
「ああせいせいした。どうもからだに恰度(ちょうど)合うほど稼(かせ)いでいるくらい、いいことはありませんな。」というききおぼえのある声が、ジョバンニの隣(とな)りにしました。見ると鳥捕りは、もうそこでとって来た鷺を、きちんとそろえて、一つずつ重ね直しているのでした。
「どうしてあすこから、いっぺんにここへ来たんですか。」ジョバンニが、なんだかあたりまえのような、あたりまえでないような、おかしな気がして問いました。
「どうしてって、来ようとしたから来たんです。ぜんたいあなた方は、どちらからおいでですか。」
 ジョバンニは、すぐ返事しようと思いましたけれども、さあ、ぜんたいどこから来たのか、もうどうしても考えつきませんでした。カムパネルラも、顔をまっ赤にして何か思い出そうとしているのでした。
「ああ、遠くからですね。」鳥捕りは、わかったというように雑作なくうなずきました。

139

主题

303

存在感

108

活跃日
 6 

SOS团三星级★★★

8楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
九、焦班尼的车票

 

  “这一带是天鹅区的尽头。那就是著名的阿尔卑列监测站。”
  窗外那像烟花一样光辉灿烂的银河正中央,矗立着四五幢黑压压的大房子。其中一幢平顶屋上有两只透明的蓝宝石和黄玉般的大圆球,鲜艳夺目,环绕着缓缓移动。[x]的渐渐转向对面,而蓝色的小一点儿的却来到这边。不久两端重合在一起,形成翠绿色的双面凸透镜。又过了一会儿,正中间渐渐膨胀,最终,蓝色的完完全全来到了黄玉球的正面,因此出现了一个绿心与[x]的明亮光环。稍顷又向侧面脱离,重新出现了一个与前面相反的凹透镜形状来。最后终于迅速离开,蓝宝石向对面旋转,[x]的朝这边行进。之后又恰好形成最初的情景,被银河那无形无声的流水所融合。漆黑的气象站,果真如同一位熟睡的老人,静静地横卧在那里。
  “那是测量水速的器械。也可测水……”捕鸟人搭话。
  “请各位出示车票。”不知什么时候,三人座位的旁边,站着一位头戴红帽子的高个子乘务员。捕鸟人默默地从衣袋里掏出一张小纸片,列车员稍微瞥了一眼,立刻移开视线,询问似地把手伸向焦班尼他们一方。
  “啊,糟了!”焦班尼窘困了。正当他扭扭捏捏不知如何是好时,柯贝内拉却大模大样地拿出一张灰色的小车票。焦班尼手忙脚乱地试探着摸了摸上衣口袋。他*地想:说不定揣在里面呢。他的手一下子触摸到一大叠纸片,心里便琢磨起来,是什么时候放入了这玩艺儿呢。急忙掏出一看,原来是一张折成四块像明信片那么大的绿纸片。列车员伸手在等着呢,管他三七二十一,先递给他再说。他这样想着,便递了过去。列车员立正站直,恭恭敬敬地打开查看,一边看一边不停地摆弄上衣的纽扣。与此同时,灯塔看守也从下往上关注地探视。焦班尼想那应该是一种什么证明,顿觉心头一阵激动。
  “您这是从三次空间世界带来的吧?”列车员问。
  “我也不知道。”焦班尼以为没问题,抬头笑道。
  “可以了。南十字星车站就是在下一个三次元空间。”列车员将纸片还给焦班尼,又转向别处去了。
  柯贝内拉迫不及待地匆匆翻看那张纸片。焦班尼也想快点好好看看。然而,那上面只是印满黑色蔓草图案的花纹和十几个奇形怪状的字。在默默注视的时间里,竟产生一种被其吞没的感觉。
  捕鸟人不禁从旁惊叹;
  “哎呀,这可是件宝贝!只要有了它,就可以上真正的天堂啦!何止天堂,这是一张天南地北畅通无阻的通行证呀!怪不得,在这不完全的幻想四次元银河铁道上,可以自由往来、东游西逛呢。原来你们俩并非一般人物。”
  “我简直搞不清是怎么回事。”焦班尼红着脸答道。他又把它叠好放回衣袋里去了。然后难为情地与柯贝内拉又装作凝视窗外的景色。他隐隐约约地感到那个捕鸟人在不时地望着这边,好像还在一个劲儿赞叹。
  “老雕车站就要到了。”柯贝内拉一边望着对岸三个排列整齐的银白色小三角标,一边对照地图说。
  焦班尼不禁莫明其妙地可怜起坐在旁边的捕鸟人。他甚至心想:只要这人能真正幸福,自己情愿做一只百年仁立在那万丈光芒的银河河滩上的小鸟,任其捕捉。总而言之,他无论如何都无法对他弃之不理。他想询问捕鸟人真正需要的东西究竟是什么,可又一想那样未免太冒失。正当他不知所措地回头张望时,坐在旁边座位上的捕鸟人已不见了。货架上的白布行李也不见了。他想会不会又在车窗外叉着双腿仰望天空,做准备捕捉白鹭的姿势呢?便连忙朝外看去。然而外面是一片美丽的沙金和银白色的芒草波浪,捕鸟人那宽大的脊背和尖顶帽却无影无踪。
  “那个人到哪儿去了?”柯贝内拉也茫然地说。
  “去哪儿了呢?我们究竟在哪儿才能再见到他呢?我还没来得及跟那人说上几句话呢?!”
  “我也是这么想的。”
  “开始我还有些觉得那人碍事,这会儿想起来心里很难受。”
  焦班尼还是有生以来第一次产生这种奇特的感情,以前从来没有过。
  “我好像闻到一种苹果味儿。大概是由于我想到苹果的缘故吧。”柯贝内拉不可思议地环视四周。
  “是有一种苹果味儿,还有一点野蔷薇的香味儿。”
  焦班尼看了看周围,他觉得好像还是由窗外吹进来的气味儿。
  可焦班尼又一想,现在是秋天,怎么会有野蔷薇花的芬芳呢?
  几乎与此同时,一个五六岁、头发乌黑油亮的小男孩突然站到眼前,红夹克衫的纽扣敞开着,一副惊恐的表情,全身瑟瑟发抖,赤裸着双足。小男孩身旁站着一位身着黑色西服、衣冠楚楚的高个子青年,他紧紧拉着男孩子的手,那姿态恰如疾风中巍然挺立的光叶榉树,肃穆而庄严。
  “哎,这是哪儿呀?噢,真漂亮!”青年人身后,还跟着一个十二岁左右、茶色瞳孔、十分可爱的小女孩,她穿着黑外套,挽着青年的胳膊,惊奇地看着车窗外面。
  “这里是蓝开夏。不,是康涅库德克特州。也不是,我们是来到了天空。我们要到天上去了,你们看!那个标志就是天上的象征。这回我们可就什么也不怕了。是上帝召见我们啦。”黑西装青年喜形于色地告诉女孩子。可不知为什么,额头又随即浮现出皱纹,显得十分疲惫不堪。他勉强微笑着,叫男孩子坐在焦班尼旁边,然后又和蔼地向小女孩指了指柯贝内拉身旁的座位。女孩子温顺地坐下,文静地合并双手。
  “我要找菊代姐姐。”男孩子屁股刚着座,便朝要坐在灯塔看守旁边的那位神情怪异的青年喊道。青年脸上现出难以形容的哀愁,死死盯住男孩那头髦曲、湿漉的黑发。小女孩猛然用双手捂住脸抽抽搭搭地哭泣起来。
  “爸爸和菊代姐姐还有很多事呢,不过他们马上就会跟来的。
  再说,妈妈已经盼望了很长时间。大概她在想:我的宝贝儿,在唱什么歌呢?风雪降临的清晨,和伙伴们手拉手绕着院子和草丛欢笑吗?妈妈是真心实意地盼望、挂念着你呢,还是快点来见妈妈吧!”
  “嗯,不过,我要是不坐那条船就好了。”
  “是呀。可是你看,天空多好,那壮观的河流!在那里,整整一个夏天,我们在唱着童谣“闪闪的星星”休息时,从窗口隐隐约约望见的那片白茫茫的东西,就是那里。你看,多漂亮呀!
  是那样地光芒灿烂。”
  姐姐停止了哭泣,用手帕擦干眼泪,望着对面。青年又开导似地轻声轻语对姐弟俩说:
  “我们已经不必再为任何事而悲伤。我们是在这么美好的地方旅行,马上就可以去上帝那里。那个地方,明亮而充满芳香,有许许多多善良、亲切的人。还有,代替我们乘上小汽艇的人们,一定都会得救的,他们可以分别回到焦急地等待着他们的父母身边,回到他们自己的家。好了,马上就到了,打起精神,让我们唱着歌前进吧!”青年抚摩着男孩那头湿漉漉的黑发,安慰着他们俩,自己的脸色也渐渐容光焕发。
  “你们几位是从哪儿来?怎么了?”
  刚才的灯塔看守总算看出了点眉目来,他问青年人。青年微微笑了笑,说:
  “是这样。我们乘坐的船撞到冰山上,沉没了。因为这孩子的父亲有急事,两个月前先回国了,我们是随后出发的。我在大学里读书,是他们俩的家庭教师。正好是第十二天,也就是今天或昨天。船一下子撞在冰山上,船体突然倾斜,然后就开始下沉。
  海面月光微薄,浓雾弥漫。救生艇左舷已经有一半淹没在水里,人们全上去肯定要同归于尽。我就拚命叫喊,‘让小孩子们先上去吧’。旁边的人立刻闪出一条路,并为孩子们祈祷。然而到救生艇之间,还有很多更小的孩子和他们的家长,我实在没有勇气去推开他们。但当我想到拯救这两个孩子是我义不容辞的责任时,还是推开了前面的孩子。可又一想,既然想拯救他们,莫不如把他们送到上帝面前,更能使他们获得真正的幸福!至于那违背上帝意志之罪,可由我一人承担,说什么我也要搭救这两个孩子。
  看看眼前的情景,我知道自己是无论如何也办不到的。小艇上挤满了与孩子们诀别的家长,母亲们疯狂地最后亲吻自己的孩子,父亲们忍着悲痛,呆立在那儿。那场面实在令人断肠。不一会儿,大船开始迅速下沉,我们紧靠在一起,已经做好充分准备。我要紧紧抱住这两个孩子,能漂多远就漂多远。最后只有等船沉了。
  此刻,不知什么人扔过来一只救生圈,可一滑又漂走了。我竭尽全力将甲板的一块木格子拆卸下来,于是三人如获救星似地牢牢抱住它。这时不知从哪里传来赞美歌,顿时大家用各国语言齐声合唱。与此同时,一声巨响,我们随即掉入水中。我想这大概是被漩涡吞没,便紧紧搂住两个孩子。当我模模糊糊思考时,就来到了这里。这孩子的母亲前年过世了。小汽艇上的人们肯定会得救的,有那么多技术熟练的船夫驾驶着迅速离开了大船。”
  周围响起一阵叹息和祈祷声,焦班尼和柯贝内拉也膝陇回想起经历的各种各样的事情,眼圈红了。
  啊,那片大海是叫太平洋吧?在冰山河流北边的大海上,不知什么人乘坐小船,与狂风,与冻结的潮水,与刺骨的严寒作斗争,他在全力以赴。我实在同情那个人,并感到过意不去。我究竟能为那个人的幸福做些什么呢?
  焦班尼垂着头,陷入深思。
  “何为幸福,我也搞不清。其实,无论多么痛苦的事,只要能正道直行,即使赴汤蹈火,也能一步步接近幸福。”灯塔看守安慰道。
  “是呀。为了达到至高无上的理想境界,就要饱尝各种苦涩,这是上帝的旨意。”青年也祷告般地回答。
  姐弟俩精疲力尽地靠在座背上东一头西一个地睡着了。男孩子刚才还是赤裸的双足,不知何时已穿上一双洁白柔软的小皮鞋。
  列车咣当咣当行驶在光辉夺目的磷光岸边,对面车窗外,如同放映着的幻灯片,成百上千的大小三角标,大三角标上还亮着红点的测量旗。原野一望无际,聚集了很多很多苍白的薄雾。不知是那里,还是更远的地方,不时有各种各样的迷离烽火般的东西,袅袅升向黛蓝色的天空。那明丽的清风,挟带着玫瑰的郁香。
  “怎么样?这种苹果您还是头一回见到吧?”坐在对面的灯塔看守,双手捧着金[x]和红色光泽的大苹果,并用腿接着,唯恐苹果掉落。
  “呀,从哪儿弄来的?真漂亮!这里出产这么漂亮的苹果呀?”青年又惊又喜。他眯着眼,侧着头,贪婪地端详灯塔看守手里捧着的那些苹果。
  “喂,请拿着吧,接着!”
  青年拿了一个,望了望焦班尼他们。
  “哎,那边两位小少爷,拿一个吧。”
  焦班尼一听被叫作“小少爷”,火气一下子上来了,但没出声儿。柯贝内拉却说声:
  “谢谢!”
  于是青年亲手拿了两个给他们俩一人一个。焦班尼无奈,起身道谢。
  灯塔看守总算腾出双手,他把最后两个苹果轻轻放在熟睡的姐弟膝盖上。
  “太感谢了。是从哪儿摘来的?这么漂亮的苹果!”青年仔细地看着苹果。
  “这一带当然也有很多人从事农业生产,但多半是自然而然结出丰硕果实的。农民也并不怎么吃苦费力。基本上是只要撒下自己喜欢的种子,就会自然丰收。稻米也不同于太平洋地区,没有稻壳。米粒足足比普通的大十倍,到处稻谷飘香。可你们去的地方,已经没有农业。无论是苹果,还是点心,连糟粕都不剩,全部蒸发。香味儿也全部由毛孔扩散出去。
  男孩子突然睁圆双眼,说话了:
  “刚才我做了一个梦,梦见妈妈了。她在一个有漂亮柜橱和很多书的地方,笑眯眯地向我伸出双手。我喊着,‘妈妈,我给您拾一个苹果吧!’就醒了。啊,这是在刚才的火车里吗?”
  “苹果在这儿,是这位伯伯给的。”青年说。
  “谢谢伯伯。阿香姐姐还在睡,我来叫醒她。姐姐,你看,人家送我们苹果了。快醒来吧!”
  姐姐甜笑着睁开眼。阳光刺眼,只见她双手遮着光线,看了看苹果。
  男孩子简直像吃苹果饼一样啃着苹果。那削得整齐好看的苹果皮,形成软木塞起子似的螺旋形,垂到地板上,但倏忽间变成一团灰光蒸发掉了。
  焦班尼他们俩把苹果藏进衣袋。
  河下游对岸,有一片郁郁葱葱的树林,树枝上结满红彤彤的圆果。树林正中央竖着一个高高的三角标。树林深处不时传来阵阵悦耳的乐声。那是一首交响乐和木琴的协奏曲,美妙的乐曲随风传来,令人陶醉。
  青年不禁浑身发抖。
  侧耳静听,那声音就像一片草绿色的田野或地毯在铺展,亦如洁白如蜡的露水从太阳表面擦过。
  “看呀,那乌鸦!”柯贝内拉旁边叫阿香的小女孩喊道。
  “那不是乌鸦,是喜鹊。”见柯贝内拉一本正经的样子,焦班尼不禁笑出来。小女孩不好意思地低下头。果然,在河滩银白色的光炎上,成群结队的黑鸟一动不动地沐浴在河流的微光之中。
  “是喜鹊!头后面的羽毛直立着。”青年像是在仲裁。
  刚才还在对面的那片绿林中的三角标,已来到车窗近前。此时,从火车后方遥远的地方又传来三○六号赞美歌那熟悉的旋律。
  是众人齐唱。青年脸一下子变得刷白,站起身想到那边去,可想了想又转身坐下了。阿香用手帕捂住脸。
  连焦班尼也感到鼻子有点不对味儿。不知不觉之间,有人带头唱起了那支歌。歌声越来越响,最后焦班尼和柯贝内拉也加入合唱。
  片刻,绿色的橄榄树林,在远去的银河对面倏然闪烁,然后渐渐消失。从那里漂来的奇特乐曲声,也被火车的轰鸣和呼啸的风声淹没,只剩下一点微弱的声响。
  “啊!有孔雀!”
  “是啊,有不少哩!”小女孩回答着。
  焦班尼看见在那逐渐变小,小得只剩下一个绿色贝壳纽扣那么大的森林上方,时常闪烁着青绿色的亮光,那是孔雀张合翅膀时出现的反光。
  “对了,刚才我好像听到孔雀的声音了。”柯贝内拉对女孩子说。
  “是的,大概足足有三十多只。那犹如竖琴声的音响就是孔雀发出的啊!”小女孩回答。
  焦班尼感到一种难以形容的酸楚,不觉说了一声:
  “柯贝内拉,我们从这里跳下去玩玩吧。”此时他的脸色十分可怕。
  河流分成两条。在漆黑的岛子中心,有一座高高的楼台,上面站着一个身穿宽大衣衫、头戴红帽子的男人,双手各持一面红绿旗,仰望天空,在发信号。
  当焦班尼朝那看时,那人先是使劲儿地挥舞红旗,接着将红旗放下藏在身后,继而高高举起绿旗,就像交响乐团指挥一般,奋力挥动旗帜。于是空中传来沙沙的雨声。一种黑糊糊的东西,如同*林弹雨,相继随声飞向河对面。焦班尼不觉将上半身探出窗外,眺望远方。美丽的黛蓝色天空下,上万只小鸟,一群接一群,各自忙碌着、啼叫着飞过。
  “鸟儿飞过去喽!”焦班尼在车窗外自语着。
  “我看看。”柯贝内拉也仰望天空。
  就在这时,楼台上穿宽大衣衫的男人,突然举起红旗,疯狂地摇动不止。于是鸟群顿时停止飞动,不再有鸟群飞来。同时,从河流下游传来某种东西“呼”地撞击倒塌的声响,一阵寂静之后,那个红帽信号员又挥动绿旗,叫道:
  “飞呀,候鸟!现在才是飞渡的时候!”声音清彻、响亮。
  与此同时,又有成千上万只候鸟从空中径直飞过。
  那个小女孩也靠近车窗,把头伸在他们俩之间,那张美丽动人的脸蛋兴高采烈地仰视着天空。
  “啊,鸟儿真多呀!啊,天空多美!”女孩子对焦班尼说。
  可焦班尼心想,乳臭未干的家伙。真讨厌!他紧闭双唇,继续仰望天空。小女孩泄气似地出了一口气,一声不响地返回座位。柯贝内拉显出很同情的样子,从窗外抽回身,看他的地图。
  “那个人是在给鸟儿指路吗?”小女孩悄声问柯贝内拉。
  “嗯,是在给候鸟发信号。一定是什么地方有烽火吧。”
  柯贝内拉没把握地回答。车厢里一阵静肃。焦班尼此时也很想把头从窗外缩回来,但把脸暴露在光亮中实在难忍,于是只好默默地保持原姿式站立着。为了掩遮尴尬他吹起口哨。
  自己为何总是这样悲伤?必须持有更宽广,更坦荡的胸怀!
  河对岸的远方,可以隐约望见点点烟雾和星星之火。那火光既宁静又凄凉,望着它可平复自己的心潮。
  焦班尼双手按住自己发烧疼痛的头部,望着那边。
  啊,为什么没有人跟随自己走向那遥远的地方?
  柯贝内拉正跟那个女孩子情投意合地交谈呢!这实在令人难以忍受。
  焦班尼热泪盈眶。银河渐渐远去,消失在远方,只能看到白白的一片。
  这时,列车逐渐离开河边,飞驰在悬崖上。
  对岸黝黑的山崖也沿着河岸向下游移动,越来越高。猛然间一棵高大的玉米株在焦班尼眼前一晃而过。玉米叶子卷曲着,叶子下面露出绿油油的大玉米棒。那玉米棒已吐出绛红的穗子,甚至可以看到珍珠般的玉米粒。玉米株一排排增多,一片又一片地排列在山崖和铁轨中间。焦班尼不禁从窗外抽回身来,向对面车窗望去。辽阔的玉米田一直通向天空下那美丽原野的地平线尽头,玉米株簌簌地随风摇动,卷曲整齐的叶梢上,滚动着充分吸收了日光、如钻石般的露珠,红的,绿的,晶莹可爱。
  “那是玉米田。”柯贝内拉对焦班尼说。可焦班尼迟迟振作不起来。仍然冷冷地望着田野,随口答道:
  “大概是吧。”
  这时,列车渐渐减缓速度,车窗外闪过几盏信号灯和扳道器的指示灯,便进入一个小站。
  正面银白色的时钟指针正好对准两点。风住了,列车停了。
  万籁俱寂的原野上,唯有那只钟摆在滴答滴答地准确记录着时间。
  在钟摆摆动稍弱的那一瞬间,隐隐约约可以听到从遥远的原野尽头飘来一丝旋律声。
  “这是新大陆交响曲。”坐在对面的女孩子望着这边,自言自语地轻声说。
  此时此刻,车厢里的黑装青年和所有的人都动情地幻想起来。
  多么恬静舒适的时刻!我为什么不能更快活些呢?为什么这么一人孤单悲伤呢?不过,柯贝内拉也未免太过分了,他是跟我一起上的这列火车,可尽顾跟那个毛丫头交谈,真叫我伤心。
  焦班尼又一次用手遮住半边脸,凝视对面的车窗。
  清脆、嘹亮的汽笛一声长鸣,列车缓缓启动。柯贝内拉也无聊地吹起“星星索”口哨。
  “噢,这里已经是荒漠的高原。”
  身后传来一位老人睡醒时那爽朗的讲话声。
  “这里的玉米若不是用棍子挖一个二尺多深的坑,将种子播下,是长不出来的。”
  “是吗。这里离河水还有相当深的距离吧?”
  “嗯,起码有两千尺到六千尺深。简直同险峻的峡谷一样。”
  对了,这里不是科罗拉多(美国州名)高原吗!焦班尼猛然想起。
  女孩子将弟弟的头靠在自己怀里,她那乌黑的双眸出神地遥望远方,陷入沉思。柯贝内拉又无聊地吹起口哨。小男孩一张像丝绸一样细腻、像苹果一样可爱的圆脸朝着焦班尼这边。
  玉米株突然不见了,黑黝黝的原野伸向远方。《新大陆交响曲》由地平线边际清晰地涌起,黑黝黝的原野上跑来一个印第安人,只见他头插白羽毛,手腕和胸前佩戴着无数只石饰,在小弓箭上搭一根利箭,正一溜烟儿地追赶火车。
  “哎呀,印第安人来了,印第安人追上来了。姐姐你看!”
  弟弟喊道。
  黑西装青年也睁开眼寻视。
  焦班尼和柯贝内拉也站了起来。
  “追上来了,追上来了。是在追火车吧?”
  “不是追火车。是在打猎。也许是在跳舞。”青年似乎忘了现在的处境,手插衣袋说道。
  印第安人大概是在跳舞,追火车也不至于这么乱蹦乱跳。这时,白色的羽毛突然向前倾倒,印第安人一下子站在那儿,敏捷地向空中拉弓射箭。一只仙鹤从天空晃晃荡荡地掉下来,不偏不倚掉在跑来的印第安人那张开的两只大手中。印第安人神气活现地站在那里。不一会儿,他那手拿仙鹤向这边张望的身影渐渐变小。电线杆上的绝缘瓷瓶一闪而过,又出现了玉米田。从这边车窗看去,便可知道列车行驶在又高又陡的悬崖山路上。由此下望,可以看到峡谷深处的河水,悠然自得地流淌着。
  “从这儿开始就是下坡路了。一直下到水平面,相当不容易。
  这样的倾斜角度,列车是不可能向相反方向行驶的。你瞧,列车开始加快了!”说这话的像是刚才那位老人。
  列车顺着坡道飞速行驶。列车接近悬崖边时,下面终于出现了明澈的河流。焦班尼心情豁然开朗。当火车开过一间小茅屋时,焦班尼发现一个小孩孤零零地站在那儿,朝这边张望。他不禁惊叫一声。
  列车勇往直前。车厢里的人们,几乎全部向后倾倒,一个个紧紧抓住车座。焦班尼忍不住与柯贝内拉一起笑了起来。银河犹如就在车旁汹涌地奔流,不时有道道光波闪耀。河滩上红瞿麦山花遍野盛开。列车终于平稳下来,速度也缓慢下来。
  对面与岸边,插着画有五角星和鹤嘴镐的旗帜。
  “那是什么旗?”焦班尼终于说话了。
  “我也不知道。地图上没有标明。还有铁船呢。”
  “啊!”
  “大概是在修桥吧。”小女孩插嘴。
  “啊,我知道了。那是工兵的旗帜,是在搞架桥演习。可是怎么不见部队呀?”
  这时,河对岸下游处,那片遥远的银河水猛然一闪,水柱高涨,随即传来“轰”地一声巨响。
  “啊,是爆破。爆破啦!”柯贝内拉跳了起来。待那高高腾起的水柱下落后,巨大的鲑鱼和鳟鱼忽闪忽闪地翻着白肚被抛向空中,划了一个圆圈后又落入水里。看到这情景,焦班尼也激动得快要跳起来。
  “是天上的工兵大队!怎么样,鳟鱼竟被抛起这么高。我还是第一次品味这么愉快的旅行,真是妙极啦!”
  “那些鳟鱼如果在近处看,一定很大很大吧。没想到这儿的水里有这么多鱼呢!”
  ‘也有小鱼吧?”小女孩也凑过来插嘴。
  “会有的。有大的,就会有小的。但离这儿太远,所以看不见小鱼儿。”焦班尼情绪已完全好转,他兴致勃勃地笑着回答小女孩的问话。
  “那准是双子星公子的宫殿。”男孩突然指着窗外大声喊。
  右前方低矮的小山上方,两座如水晶块垒造的宫殿并排耸立。
  “双子星公子的宫殿是怎么回事?”
  “我以前听妈妈讲过好多次,说有两座小巧玲珑的水晶宫并排耸立。肯定就是这里。”
  “说呀,双子星公子怎么了?”
  “我也知道。双子星公子来到田野玩耍,跟乌鸦吵起嘴来,对吧?姐姐。”
  “才不是呢。是妈妈在天河岸边讲的那个故事……。”
  “后来慧星咿呀咿呀地赶来了。”
  “你别捣乱!净瞎说,那是另一个故事。”
  “所以才在那儿吹笛子吧?”
  “已经下海了。”
  “不对不对。他们已经从海里上岸了。”
  “对对,我想起来了,我来讲。”
  对岸河上突然一片通红。
  杨树等树木一片漆黑。本来望不见的天河波澜,此时也隐约泛出细细的红光。对岸的原野上似乎燃起熊熊火焰。滚滚浓烟像要将高高的黛蓝色冷酷的天空烧焦。那火焰比红宝石还要鲜艳、明亮,比合金玻璃更加绚丽多彩。
  “那是什么火光?烧什么东西火光才能如此迷人?”焦班尼说。
  “那是天蝎火光。”柯贝内拉又对着地图查看。
  “啊,是天蝎火光呀。那我知道。”
  “天蝎火光是怎么回事?”焦班尼问。
  “天蝎被烧死了。据传那大火一直燃烧到现在。爸爸讲过好几次。”
  “天蝎是虫子吗?”
  “是的,天蝎是虫子,是好虫子。”
  “天蝎不是好虫子。我在博物馆看过,泡在酒精里。尾巴上有个大夹子,老师说过,如果谁被它蜇了就会死的。”
  “那当然。那它也是好虫子,爸爸说的。从前,在巴尔都拉原野,有一只小天蝎,专门吃小虫子什么的。一天,它遇上黄鼠狼,险些被吃掉。天蝎不顾一切地逃命。眼看就要被黄鼠狼抓住,不小心,天蝎掉进一口水井里,怎么也爬不上来。天蝎眼看就要被水淹死,它就这样祷告说:
  ‘啊,我以前不知吞食了多少生命,如今当黄鼠狼捕捉我时,我是那么狼狈地奔逃。但终于还是落到这一地步。啊,天哪,我已经没有救了。我为什么不乖乖地把自己的肉体让黄鼠狼吃掉呢?
  它也会为此多活一日。上帝呀,请体察我的心意。不要这么白白地送命,为了使大家获得真正的幸福,就请用我的身体吧。’
  不觉之间,天蝎望见自己的身体燃烧起通红的火焰,照亮了四周的黑暗。爸爸曾经说过,这火至今还在燃烧。没错,那边的火焰就是天蝎火光。”
  “是的,看呀!那边的三角标,不正是一只天蝎的形状吗?”
  焦班尼也觉得火焰对面的三个三角标恰似天蝎的臂膀,这边的五个三角标犹如天蝎尾巴上的钳形爪。而那团鲜红、明亮的天蝎火光果真在无声地燃烧,光闪透明。
  随着那团火焰渐渐远去,人们甚至可以听到一阵极其喧闹的交响乐曲声,闻到一股百花盛开的芳香,并夹杂着口哨声和嘈杂的讲话声。使人感到附近好像有个什么镇子,人们正在那里欢庆节日。
  “半人马星座,快降露水哟!”一直睡在焦班尼身旁的小男孩突然望着对面的车窗叫喊起来。
  只见那里有一棵像圣诞树一样翠绿的桧树,树上闪烁着无数只小灯泡,宛如成千上万只萤火虫聚集在一起,一片晶莹。
  “对了,今晚是半人马星座节呀!”
  “这里是半人马星座村。”柯贝内拉脱口说道。
  “我投球最准啦。”小男孩非常自豪地说。
  “南十字星站就要到了。准备下车吧。”青年人对姐弟俩说。
  “我还想坐一会儿。”小男孩说。
  柯贝内拉身旁的小女孩心神不定地站起身来准备下车,可心里似乎仍不愿与焦班尼他们分手。
  “我们非在这儿下车不可。”青年人紧板着脸对小男孩说。
  “不。我要再坐一程火车,然后再去。”
  焦班尼实在看不下去,说:
  “跟我们走吧。我们的车票,可以到任何地方。”
  “可我们必须在这儿下车,从这里可以上天。”
  小女孩说着露出一丝淡淡的愁容。
  “干嘛非要上天呢?老师说过,我们要在这里创造出比天上更幸福的世界。”
  “可我妈妈已经去了。这一切都是上帝的旨意。”
  “你信奉的上帝是假上帝。”
  “你的上帝才是假上帝呢!”
  “不是。”
  “那么你的上帝是什么样呢?”青年人笑着问道。
  “我也不太清楚。不过真正的上帝应该只有一个。”
  “真正的上帝当然只有一个。”
  “我是说,千真万确的上帝只有一个。”
  “这不就对了。我祈祷,愿上帝保佑我们,在你所说的那位真正的上帝面前,再与二位见面吧。”青年人虔诚地合掌而拜。
  小女孩也这样做了。大家依依不舍,脸色显得有些苍白。焦班尼几乎失声痛哭。
  “准备好了吧?南十字星站就要到了。”
  这个时候,遥远的天河下游处出现了光彩夺目、色彩斑斓的十字架。它如同一棵大树,粲然矗立在河流之中,其周围缭绕的青云恰如圆圆的光环悬在空中。车厢里人声鼎沸。人们如同上次见到北十字星时一样,穆然肃立开始祷告。到处可以听到如孩子们扑向食品时的欢呼声和难以形容的深沉的赞叹声。十字架渐渐移行到车窗前,苹果肉般苍白的环状云朵,轻缓地缭绕着。
  “哈利路亚!哈利路亚!”人们欢乐、明快的呼声震人心弦。
  人们从天空远方——那凄凉的天空远方,听到一阵极其清脆、响亮的嗽叭声。又有许多信号灯和灯光闪过,火车渐渐减速,终于来到十字架的正前方,停止不动了。
  “好了,我们该下车啦!”青年拉过小男孩的手,姐弟俩互相整理一下衣领,拍了拍对方肩上的灰尘,磨磨蹭蹭地朝车门那边走去。
  “再见啦!”小女孩回过头向两人道别。
  “再见。”焦班尼强忍泪水,生气般硬邦邦地说。
  小女孩十分难过地睁大眼睛,再次回头一望,然后无言地径直走出了车门。车厢里的乘客下了一大半,空荡荡的车厢显得格外凄清,外面寒风呼啸。
  窗外,人们恭恭敬敬排着整齐的队伍,跪在十字架前的天河岸边。两人看见一个身穿漂亮白衣的人越过无形的天河之水,正庄严肃穆地伸出双手,向这边走来。就在此时,清脆的汽笛声响起,火车开始启动,银白色的云雾从下游倏地飘来,立时吞没了一切,什么都看不到了,唯有许多核桃树的叶片明灿灿地闪现在雾中。带有金色光环的电松鼠,时隐时现地露出可爱的小脸向外张望。
  尔后,云雾又倏地散尽,现出一条不知通往何方的街道,路旁点着一排小灯泡。当二人顺着那灯光向前走时,小灯泡宛如向他们点头致意似地熄灭了,而当二人走过时,却又亮了。
  回头望去,刚才那座十字架已截然变小,简直可以作项链挂在胸前。刚才的小女孩和青年等人依然跪在那片白色的河岸上呢,还是去了那虚无缥缈的天上?景物迷离,无从知晓。
  焦班尼长长叹了口气。
  “柯贝内拉,又只剩下我们俩了。我俩无论到哪儿都要同行才好。我现在就像那只小天蝎,只要能为大家寻求真正的幸福。
  就是身经千锤百炼,我也不在乎。”
  “嗯,我也是那样想。”柯贝内拉眼里浮现出晶莹的泪花。
  “可是,真正的幸福究竟是什么呢?”焦班尼问。
  “这个,我也不知道。”柯贝内拉茫然地回答。
  “总之,咱们应该尽最大努力。”焦班尼仿佛心里充满无穷的力量,深深吸了一口气。
  “哎,那莫不是煤炭草袋?活像天空的黑洞。”柯贝内拉一边胆怯地避开视线,一边指着天河的一处说。
  焦班尼往那儿一望,不禁倒抽一口冷气。天河果然出现一个黑洞洞的大口子。它到底有多深?一直通到何处?无论怎么擦亮眼睛,也觉得深不可测,只感到刺眼般的疼痛。焦班尼说:
  “再大的黑洞我也不怕。我一定要去寻找人们的真正幸福。
  不管到哪儿,我们俩也要携手并肩,共同前进。”
  “一定,一定那样。哎,你看,那是多么美丽辽阔的原野呀!
  那里有很多人,大概是真正的天堂吧?啊,我妈妈也在那儿。”
  柯贝内拉突然指着窗外远方山花烂漫的原野欢叫起来。
  焦班尼随之向那边张望,只见那边雾茫茫,怎么也看不出有柯贝内拉说的那种绚丽多彩的景象。
  焦班尼心里一阵惆怅,呆呆地朝那边张望。对面河岸上的两根电线杆,宛如双双手挽手地托一根红色横木立在那里。
  “柯贝内拉,我们一起去,好吗?”焦班尼说着回过头来,可刚才还有柯贝内拉坐着的座位上,已不见他的影子。只有黑天鹅绒座椅,闪闪发光。
  焦班尼如同出膛*霍然而起,努力不被人察觉地向窗外探出身子,奋力猛打自己的胸脯,大声疾呼,最后扯开噪门失声痛哭出来。
  周围世界旋即漆黑一团。
  “你在哭什么呀?转过身来!”那曾经听到多次、像大提琴一样温和的声音,从焦班尼身后响起。
  焦班尼愣了一下,马上擦了擦眼泪,转过身来。发现刚才柯贝内拉坐过的座位上端坐着一位戴着大黑帽子、面颊苍白消瘦的大人,手拿一本大厚书,正慈祥地笑着目视焦班尼。
  “你的朋友不见了,是不是?他呀,今晚就真的去遥远的地方了。你不要再找他了。”
  “为什么?我已经答应跟柯贝内拉一起去的。”
  “是的,人们都这么想。但事实上是办不到的。我们每个人都和柯贝内拉一样。你所见过的所有的人都和你一样,曾经尝过富有光泽的苹果,坐过这列火车。所以,就像你刚才想的那样,要为了寻找所有人的最终的幸福,和大家一起尽快到达那理想之乡。只有到了那里,你才能和柯贝内拉永远永远地呆在一起。”
  “我一定要实现这一理想。可是我应该怎么做才能得到这一幸福呢?”
  “我也在寻求同一目标。你要好好拿着你这张车票,要专心学习。你学过化学吧?那你就应该知道水是由氧气和氢气合成的。
  没有人怀疑这一真理,因为实验已充分证明。然而以前人们说它是由水银和盐合成的,也有人说它是由水银和硫磺化合成的,真是众说纷纭。每个人都认为自己信奉的上帝才是真正的上帝,那么,对那些和自己信仰不同的人们的感人故事,不是也会为之落泪吗?如果那样,我们又要对我们的心地好坏加以议论,是不是?
  结果往往找不出正确答案,对吧?但是,如果你真正用心学习,就可以通过验证来正确区别真假,只要这种验证的方法得以确立,那么信仰和化学没有什么两样。我们就来看看这本书上是怎么讲的。你听着,这是一本史地辞典。书的一页上记载着公元两千二百年前的地理和历史。你好好看看,这可不是现在我们书上记载的公元两千二百年前的历史。而是记载着公元两千二百年前,当时人们思考的地理和历史。
  所以,这一页就相当于我们现在的一本史地书籍。懂了吗?
  这本书记载的全都是公元两千二百年前的真理,证据十分充分。
  如果对它有所怀疑,那就翻看下一页吧。
  公元一千年前,地理和历史发生了巨大变化。当时的情景就是如此。你不要做出那种难以置信的表情。我们对一切,包括我们的身体、思维和天河、火车、历史,这一切都是由于我们的感觉才存在。你看,还是与我在一起,你才稍微心平气和些了吧?”
  那人说着抬起一只手指,又缓缓放下。焦班尼顿时觉得自己、自己的思维、火车和那位学者、天河全部在一闪之后消失,化为乌有。过了一会儿,随着其中一片空间光闪闪发亮后,一切都显得那么空旷、坦荡,所有历史转瞬即逝,一切空空如也,虚无飘缈。光芒、黑暗的变幻急剧加速,不久一切又恢复原状。
  “明白了吗?你今后的实验,要将这些支离破碎的思维,由始至终地贯穿起来。这不是一件容易的事,能够完整地实验其中一段就行。你看,那边有颗普列西斯(蛇颈龙)星,你要将普列西斯星上的枷锁拆开。”
  此时,一串烽火由对面漆黑的地平线腾空而起,照得整个车厢雪白如昼。那串烽火一直升上天空,光芒四射。
  “是马杰兰星云!我要为了我自己,为了母亲,为了柯贝内拉,为了大家去寻找那真正的幸福。”
  焦班尼咬紧嘴唇,仰望着马杰兰星云起身发誓——为了那最应该获得这幸福的人!
  “好了。你要牢牢握住你的车票。你马上就要不在这梦幻的列车上,而是回到现实世界的惊涛巨澜里,阔步行进。天河中那张唯一可以带回的车票,你千万不可丢失。”
  那大提琴般温柔、平缓的声音还在耳边回响,但焦班尼却觉得天河已离自己十分遥远。微风吹拂,他发觉自己正伫立在长满青草的小山冈上,同时听见布尔卡尼罗博士的脚步声渐渐接近。
  “谢谢你协助我进行了一次非常成功的实验。我一直在考虑进行一次从遥远宁静的地方,将我的思想传达给别人的实验。你的话语,我都记在笔记本上了。你就像在梦幻中决定的那样果断地行动吧!今后可以随时随地来我这儿商量任何事情。”
  “我一定坚定信念,我一定要找到幸福!”焦班尼满怀信心地说。
  “那么再见。这是刚才那张车票。”
  博士将叠成小方块儿的绿纸片放进焦班尼衣袋里,随后消失在气象标后面。
  焦班尼一口气跑下山风。
  他感到自己衣袋里好像有什么沉甸甸的东西,叮叮当当乱响,便在树林里停下步掏出来看。原来刚才梦幻中的那张奇特的天河绿车票里包着两枚明晃晃的金币。
  “博士,谢谢您了。妈妈,我这就给您拿牛奶去。”
  焦班尼说着又继续向前跑。仿佛有千言万语一齐涌向心头。
  他既感到有些悲伤惆怅,又感到精神焕然一新,浑身充满力量。
  天琴星座已转到西方天际,如在梦中伸了个懒腰。
  焦班尼一下子睁眼醒来,原来他疲乏地躺在这小山冈的草坪上睡过去了。他心里久久不能平静,脸颊沾满冰冷的泪水。
  焦班尼弹簧一般跳起身来。镇子仍像刚才一样灯火通明。但焦班尼却感觉这光亮比刚才要温暖得多。
  刚才自己还在梦里邀游的天河,依然白灿灿地挂在天边,黑洞洞的南边地平线的上空尤其扑朔迷离,如烟雾蒸腾。其右边的天蝎座红星银辉熠熠,天空整体的排列几乎没有任何变化。
  焦班尼一溜烟儿跑下山冈。他心里只是惦念还没吃晚饭的母亲。他飞速穿越黑洞洞的松林,绕过牧场的灰白色栅栏,从刚才的入口处返回昏暗的牛舍前面。好像有人刚刚外出归来,傍晚没有见到,而现在却停着上辆车,车上装着两只木桶。
  “晚上好。家里有人吗?”焦班尼喊了一声。
  “来了。”一位穿白肥脚裤的人立刻应声走出。
  “有什么事吗?”
  “今天没有给我们家送奶。”
  “是吗,那可太对不起了。”那人马上回到里边拿来一瓶牛奶,递给焦班尼,笑着说:
  “实在对不起。噢,今天中午,我迷迷糊糊地没关好栅栏,有条大蛇乘虚而入,钻到母牛那儿,喝掉了大部份的牛奶。”
  “是吗?好,我该回去了。”
  “好的。让你特意跑来一趟。”
  “没什么。”
  焦班尼两手捧着还温热的奶瓶,走出牧场栅栏。
  他穿过林荫道,走上大街。又走了一会儿,便到了十字路口。
  路口右前方大路尽头就是刚才柯贝内拉他们分完河灯出发的地方。
  河上的桥头堡隐隐约约耸立在夜空中。
  十字路的街边店铺前,聚集着两伙女子,一边朝桥那边观望,一边交头接耳地谈论什么。
  再一看,桥上也有许许多多的灯光和熙攘的人群往来晃动。
  焦班尼心里一下子凉了半截。他猛然冲着旁边人大声问道:
  “出什么事了?”
  “小孩掉到河里了。”一个人说罢,其他人不约而同地看着焦班尼。焦班尼不顾一切地向大桥跑去,桥上人山人海,简直看不见河面。人群中还有穿白*的警察。
  焦班尼顺着桥墩飞也似地下到开阔的岸边。
  只见许多人手持灯火沿着河滩匆匆忙忙走上走下。对岸黑暗的堤坝上也有七八点灯火在移动。河面上早已不见王瓜灯笼的影子,灰暗的河水发着微弱的声响,静静流淌。
  下游河滩有一块沙洲,黑压压的人群轮廓分明可见。焦班尼快步来到人群前,一眼发现刚才跟柯贝内拉在一起的马尔苏。马尔苏走过来对焦班尼说:
  “焦班尼,柯贝内拉掉到河里去啦!”
  “这怎么会?什么时候掉进去的?”
  “扎内利想从船上把王瓜灯笼推到河里去,不料船身晃了一下,他就栽到河里去了。柯贝内拉为了救他立刻跳入水中,奋力把扎内利推向船边。扎内利抓住船舷得救了,而柯贝内拉却再也不见了。”
  “大家都去寻找了吧!”
  “嗯,可不久就都回来了。柯贝内拉的父亲也赶来了。可是无论如何都找不到,扎内利已被领回家了。”
  焦班尼走进人群。面色铁青、尖下额颏柯贝内拉父亲身穿黑衣服呆呆地直立着,四周围满了学生和镇上的人。柯贝内拉父亲左手攥着手表,目不转睛地注视河面,众人也都死死盯着河面。
  四周鸦雀无声。焦班尼只觉心里忐忑不安,双腿打颤。打鱼用的电石灯往来穿梭。黑黑的河水微波闪闪,涌流不息。
  下游,漫长的银河倒映在整个河面,如在眼前,俨然果真降临人间。
  焦班尼此时感到柯贝内拉永远都要留在那条银河边上了。不禁涌起一阵难以抑制的心酸。
  人们仍不死心,渴望柯贝内拉从浪花中跃出说一声:“我游了好远好远”,或者他到了一个无人知晓的沙洲,等待人们去搭救。
  这时,柯贝内拉的父亲断然说:
  “已经不行了。他自落水已过了四十五分钟!”
  焦班尼猛地冲到博士跟前,本来想说自己知道柯贝内拉的去向,自己一直和柯贝内拉在一起来着。可是喉咙好像给什么东西塞住了,什么也说不出来。博士倒以为焦班尼前来问候,便端详了好一会焦班尼。
  “你是焦班尼吧?今晚让你受累了!”博士亲切地说。焦班尼半晌说不出话来,只是一个劲儿地鞠躬。
  “你父亲回来了吧?”博士紧紧抓着手表,又问了一句。
  “还没有。”焦班尼轻轻摇了摇头。
  “怎么会呢?前天他还给我来信呢。信上说,他很好。今天总该回来了吧!或者船误期了不成?焦班尼,明天放学后和大伙儿一起来我家玩吧!”
  说完,博士继续将视线移向下游银河倒映的河面。
  焦班尼百感交集,默默离开博士。他想快些把牛奶送到母亲身边,并把父亲就要回来的消息告诉母亲。于是一溜烟地沿着河滩向镇子跑去。

139

主题

303

存在感

108

活跃日
 6 

SOS团三星级★★★

9楼
发表于 2006/09/17 | 编辑
   九、ジョバンニの切符(きっぷ)

「もうここらは白鳥区のおしまいです。ごらんなさい。あれが名高いアルビレオの観測所です。」
 窓の外の、まるで花火でいっぱいのような、あまの川のまん中に、黒い大きな建物が四棟(むね)ばかり立って、その一つの平屋根の上に、眼(め)もさめるような、青宝玉(サファイア)と黄玉(トパース)の大きな二つのすきとおった球が、輪になってしずかにくるくるとまわっていました。黄いろのがだんだん向うへまわって行って、青い小さいのがこっちへ進んで来、間もなく二つのはじは、重なり合って、きれいな緑いろの両面凸(とつ)レンズのかたちをつくり、それもだんだん、まん中がふくらみ出して、とうとう青いのは、すっかりトパースの正面に来ましたので、緑の中心と黄いろな明るい環(わ)とができました。それがまただんだん横へ外(そ)れて、前のレンズの形を逆に繰(く)り返し、とうとうすっとはなれて、サファイアは向うへめぐり、黄いろのはこっちへ進み、また丁度さっきのような風になりました。銀河の、かたちもなく音もない水にかこまれて、ほんとうにその黒\い測候所が、睡(ねむ)っているように、しずかによこたわったのです。
「あれは、水の速さをはかる器械です。水も……。」鳥捕(とりと)りが云いかけたとき、
「切符を拝見いたします。」三人の席の横に、赤い帽子(ぼうし)をかぶったせいの高い車掌(しゃしょう)が、いつかまっすぐに立っていて云いました。鳥捕りは、だまってかくしから、小さな紙きれを出しました。車掌はちょっと見て、すぐ眼をそらして、(あなた方のは?)というように、指をうごかしながら、手をジョバンニたちの方へ出しました。
「さあ、」ジョバンニは困って、もじもじしていましたら、カムパネルラは、わけもないという風で、小さな鼠(ねずみ)いろの切符を出しました。ジョバンニは、すっかりあわててしまって、もしか上着のポケットにでも、入っていたかとおもいながら、手を入れて見ましたら、何か大きな畳(たた)んだ紙きれにあたりました。こんなもの入っていたろうかと思って、急いで出してみましたら、それは四つに折ったはがきぐらいの大きさの緑いろの紙でした。車掌が手を出しているもんですから何でも構わない、やっちまえと思って渡しましたら、車掌はまっすぐに立ち直って叮寧(ていねい)にそれを開いて見ていました。そして読みながら上着のぼたんやなんかしきりに直したりしていましたし燈台看守も下からそれを熱心にのぞいていましたから、ジョバンニはたしかにあれは証明書か何かだったと考えて少し胸が熱くなるような気がしました。
「これは三次空間の方からお持ちになったのですか。」車掌がたずねました。
「何だかわかりません。」もう大丈夫(だいじょうぶ)だと安心しながらジョバンニはそっちを見あげてくつくつ笑いました。
「よろしゅうございます。南十字(サウザンクロス)へ着きますのは、次の第三時ころになります。」車掌は紙をジョバンニに渡して向うへ行きました。
 カムパネルラは、その紙切れが何だったか待ち兼ねたというように急いでのぞきこみました。ジョバンニも全く早く見たかったのです。ところがそれはいちめん黒い唐草(からくさ)のような模様の中に、おかしな十ばかりの字を印刷したものでだまって見ていると何だかその中へ吸い込(こ)まれてしまうような気がするのでした。すると鳥捕りが横からちらっとそれを見てあわてたように云いました。\n「おや、こいつは大したもんですぜ。こいつはもう、ほんとうの天上へさえ行ける切符だ。天上どこじゃない、どこでも勝手にあるける通行券です。こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想(げんそう)第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行ける筈(はず)でさあ、あなた方大したもんですね。」
「何だかわかりません。」ジョバンニが赤くなって答えながらそれを又(また)畳んでかくしに入れました。そしてきまりが悪いのでカムパネルラと二人、また窓の外をながめていましたが、その鳥捕りの時々大したもんだというようにちらちらこっちを見ているのがぼんやりわかりました。
「もうじき鷲(わし)の停車場だよ。」カムパネルラが向う岸の、三つならんだ小さな青じろい三角標と地図とを見較(みくら)べて云いました。
 ジョバンニはなんだかわけもわからずににわかにとなりの鳥捕りが気の毒でたまらなくなりました。鷺(さぎ)をつかまえてせいせいしたとよろこんだり、白いきれでそれをくるくる包んだり、ひとの切符をびっくりしたように横目で見てあわててほめだしたり、そんなことを一一考えていると、もうその見ず知らずの鳥捕りのために、ジョバンニの持っているものでも食べるものでもなんでもやってしまいたい、もうこの人のほんとうの幸(さいわい)になるなら自分があの光る天の川の河原(かわら)に立って百年つづけて立って鳥をとってやってもいいというような気がして、どうしてももう黙(だま)っていられなくなりました。ほんとうにあなたのほしいものは一体何ですか、と訊(き)こうとして、それではあんまり出し抜(ぬ)けだから、どうしようかと考えて振(ふ)り返って見ましたら、そこにはもうあの鳥捕りが居ませんでした。網棚(あみだな)の上には白い荷物も見えなかったのです。また窓の外で足をふんばってそらを見上げて鷺を捕る支度(したく)をしているのかと思って、急いでそっちを見ましたが、外はいちめんのうつくしい砂子と白いすすきの波ばかり、あの鳥捕りの広いせなかも尖(とが)った帽子も見えませんでした。
「あの人どこへ行ったろう。」カムパネルラもぼんやりそう云っていました。
「どこへ行ったろう。一体どこでまたあうのだろう。僕(ぼく)はどうしても少しあの人に物を言わなかったろう。」
「ああ、僕もそう思っているよ。」
「僕はあの人が邪魔(じゃま)なような気がしたんだ。だから僕は大へんつらい。」ジョバンニはこんな変てこな気もちは、ほんとうにはじめてだし、こんなこと今まで云ったこともないと思いました。
「何だか苹果(りんご)の匂(におい)がする。僕いま苹果のこと考えたためだろうか。」カムパネルラが不思議そうにあたりを見まわしました。
「ほんとうに苹果の匂だよ。それから野茨(のいばら)の匂もする。」ジョバンニもそこらを見ましたがやっぱりそれは窓からでも入って来るらしいのでした。いま秋だから野茨の花の匂のする筈はないとジョバンニは思いました。
 そしたら俄(にわ)かにそこに、つやつやした黒い髪(かみ)の六つばかりの男の子が赤いジャケツのぼたんもかけずひどくびっくりしたような顔をしてがたがたふるえてはだしで立っていました。隣(とな)りには黒\い洋服をきちんと着たせいの高い青年が一ぱいに風に吹(ふ)かれているけやきの木のような姿勢で、男の子の手をしっかりひいて立っていました。
「あら、ここどこでしょう。まあ、きれいだわ。」青年のうしろにもひとり十二ばかりの眼の茶いろな可愛(かあい)らしい女の子が黒い外套(がいとう)を着て青年の腕(うで)にすがって不思議そうに窓の外を見ているのでした。\n「ああ、ここはランカシャイヤだ。いや、コンネクテカット州だ。いや、ああ、ぼくたちはそらへ来たのだ。わたしたちは天へ行くのです。ごらんなさい。あのしるしは天上のしるしです。もうなんにもこわいことありません。わたくしたちは神さまに召(め)されているのです。」黒服の青年はよろこびにかがやいてその女の子に云(い)いました。けれどもなぜかまた額に深く皺(しわ)を刻んで、それに大へんつかれているらしく、無理に笑いながら男の子をジョバンニのとなりに座(すわ)らせました。\n それから女の子にやさしくカムパネルラのとなりの席を指さしました。女の子はすなおにそこへ座って、きちんと両手を組み合せました。
「ぼくおおねえさんのとこへ行くんだよう。」腰掛(こしか)けたばかりの男の子は顔を変にして燈台看守の向うの席に座ったばかりの青年に云いました。青年は何とも云えず悲しそうな顔をして、じっとその子の、ちぢれてぬれた頭を見ました。女の子は、いきなり両手を顔にあててしくしく泣いてしまいました。
「お父さんやきくよねえさんはまだいろいろお仕事があるのです。けれどももうすぐあとからいらっしゃいます。それよりも、おっかさんはどんなに永く待っていらっしゃったでしょう。わたしの大事なタダシはいまどんな歌をうたっているだろう、雪の降る朝にみんなと手をつないでぐるぐるにわとこのやぶをまわってあそんでいるだろうかと考えたりほんとうに待って心配していらっしゃるんですから、早く行っておっかさんにお目にかかりましょうね。」
「うん、だけど僕、船に乗らなけぁよかったなあ。」\\n「ええ、けれど、ごらんなさい、そら、どうです、あの立派な川、ね、あすこはあの夏中、ツインクル、ツインクル、リトル、スター をうたってやすむとき、いつも窓からぼんやり白く見えていたでしょう。あすこですよ。ね、きれいでしょう、あんなに光っています。」
 泣いていた姉もハンケチで眼をふいて外を見ました。青年は教えるようにそっと姉弟にまた云いました。
「わたしたちはもうなんにもかなしいことないのです。わたしたちはこんないいとこを旅して、じき神さまのとこへ行きます。そこならもうほんとうに明るくて匂がよくて立派な人たちでいっぱいです。そしてわたしたちの代りにボートへ乗れた人たちは、きっとみんな助けられて、心配して待っているめいめいのお父さんやお母さんや自分のお家へやら行くのです。さあ、もうじきですから元気を出しておもしろくうたって行きましょう。」青年は男の子のぬれたような黒\い髪をなで、みんなを慰(なぐさ)めながら、自分もだんだん顔いろがかがやいて来ました。
「あなた方はどちらからいらっしゃったのですか。どうなすったのですか。」さっきの燈台看守がやっと少しわかったように青年にたずねました。青年はかすかにわらいました。
「いえ、氷山にぶっつかって船が沈(しず)みましてね、わたしたちはこちらのお父さんが急な用で二ヶ月前一足さきに本国へお帰りになったのであとから発(た)ったのです。私は大学へはいっていて、家庭教師にやとわれていたのです。ところがちょうど十二日目、今日か昨日(きのう)のあたりです、船が氷山にぶっつかって一ぺんに傾(かたむ)きもう沈みかけました。月のあかりはどこかぼんやりありましたが、霧(きり)が非常に深かったのです。ところがボートは左舷(さげん)の方半分はもうだめになっていましたから、とてもみんなは乗り切らないのです。もうそのうちにも船は沈みますし、私は必死となって、どうか小さな人たちを乗\せて下さいと叫(さけ)びました。近くの人たちはすぐみちを開いてそして子供たちのために祈(いの)って呉(く)れました。けれどもそこからボートまでのところにはまだまだ小さな子どもたちや親たちやなんか居て、とても押(お)しのける勇気がなかったのです。それでもわたくしはどうしてもこの方たちをお助けするのが私の義務だと思いましたから前にいる子供らを押しのけようとしました。けれどもまたそんなにして助けてあげるよりはこのまま神のお前にみんなで行く方がほんとうにこの方たちの幸福だとも思いました。それからまたその神にそむく罪はわたくしひとりでしょってぜひとも助けてあげようと思いました。けれどもどうして見ているとそれができないのでした。子どもらばかりボートの中へはなしてやってお母さんが狂気(きょうき)のようにキスを送りお父さんがかなしいのをじっとこらえてまっすぐに立っているなどとてももう腸(はらわた)もちぎれるようでした。そのうち船はもうずんずん沈みますから、私はもうすっかり覚悟(かくご)してこの人たち二人を抱(だ)いて、浮(うか)べるだけは浮ぼうとかたまって船の沈むのを待っていました。誰(たれ)が投げたかライフブイが一つ飛んで来ましたけれども滑(すべ)ってずうっと向うへ行ってしまいました。私は一生けん命で甲板(かんぱん)の格子(こうし)になったとこをはなして、三人それにしっかりとりつきました。どこからともなく〔約二字分空白〕番の声があがりました。たちまちみんなはいろいろな国語で一ぺんにそれをうたいました。そのとき俄(にわ)かに大きな音がして私たちは水に落ちもう渦(うず)に入ったと思いながらしっかりこの人たちをだいてそれからぼうっとしたと思ったらもうここへ来ていたのです。この方たちのお母さんは一昨年没(な)くなられました。ええボートはきっと助かったにちがいありません、何せよほど熟練な水夫たちが漕(こ)いですばやく船からはなれていましたから。」
 そこらから小さないのりの声が聞えジョバンニもカムパネルラもいままで忘れていたいろいろのことをぼんやり思い出して眼(め)が熱くなりました。
(ああ、その大きな海はパシフィックというのではなかったろうか。その氷山の流れる北のはての海で、小さな船に乗って、風や凍(こお)りつく潮水や、烈(はげ)しい寒さとたたかって、たれかが一生けんめいはたらいている。ぼくはそのひとにほんとうに気の毒でそしてすまないような気がする。ぼくはそのひとのさいわいのためにいったいどうしたらいいのだろう。)ジョバンニは首を垂れて、すっかりふさぎ込(こ)んでしまいました。\n「なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら峠(とうげ)の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから。」
 燈台守がなぐさめていました。
「ああそうです。ただいちばんのさいわいに至るためにいろいろのかなしみもみんなおぼしめしです。」
 青年が祈るようにそう答えました。
 そしてあの姉弟(きょうだい)はもうつかれてめいめいぐったり席によりかかって睡(ねむ)っていました。さっきのあのはだしだった足にはいつか白い柔(やわ)らかな靴(くつ)をはいていたのです。
 ごとごとごとごと汽車はきらびやかな燐光(りんこう)の川の岸を進みました。向うの方の窓を見ると、野原はまるで幻燈(げんとう)のようでした。百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そこからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙(のろし)のようなものが、かわるがわるきれいな桔梗(ききょう)いろのそらにうちあげられるのでした。じつにそのすきとおった奇麗(きれい)な風は、ばらの匂(におい)でいっぱいでした。
「いかがですか。こういう苹果(りんご)はおはじめてでしょう。」向うの席の燈台看守がいつか黄金(きん)と紅でうつくしくいろどられた大きな苹果を落さないように両手で膝(ひざ)の上にかかえていました。
「おや、どっから来たのですか。立派ですねえ。ここらではこんな苹果ができるのですか。」青年はほんとうにびっくりしたらしく燈台看守の両手にかかえられた一もりの苹果を眼を細くしたり首をまげたりしながらわれを忘れてながめていました。
「いや、まあおとり下さい。どうか、まあおとり下さい。」
 青年は一つとってジョバンニたちの方をちょっと見ました。
「さあ、向うの坊(ぼっ)ちゃんがた。いかがですか。おとり下さい。」
 ジョバンニは坊ちゃんといわれたのですこししゃくにさわってだまっていましたがカムパネルラは
「ありがとう、」と云いました。すると青年は自分でとって一つずつ二人に送ってよこしましたのでジョバンニも立ってありがとうと云いました。
 燈台看守はやっと両腕(りょううで)があいたのでこんどは自分で一つずつ睡っている姉弟の膝にそっと置きました。
「どうもありがとう。どこでできるのですか。こんな立派な苹果は。」
 青年はつくづく見ながら云いました。
「この辺ではもちろん農業はいたしますけれども大ていひとりでにいいものができるような約束(やくそく)になって居(お)ります。農業だってそんなに骨は折れはしません。たいてい自分の望む種子(たね)さえ播(ま)けばひとりでにどんどんできます。米だってパシフィック辺のように殻(から)もないし十倍も大きくて匂もいいのです。けれどもあなたがたのいらっしゃる方なら農業はもうありません。苹果だってお菓子だってかすが少しもありませんからみんなそのひとそのひとによってちがったわずかのいいかおりになって毛あなからちらけてしまうのです。」
 にわかに男の子がぱっちり眼をあいて云いました。
「ああぼくいまお母さんの夢(ゆめ)をみていたよ。お母さんがね立派な戸棚(とだな)や本のあるとこに居てね、ぼくの方を見て手をだしてにこにこにこにこわらったよ。ぼくおっかさん。りんごをひろってきてあげましょうか云ったら眼がさめちゃった。ああここさっきの汽車のなかだねえ。」
「その苹果(りんご)がそこにあります。このおじさんにいただいたのですよ。」青年が云いました。
「ありがとうおじさん。おや、かおるねえさんまだねてるねえ、ぼくおこしてやろう。ねえさん。ごらん、りんごをもらったよ。おきてごらん。」
 姉はわらって眼をさましまぶしそうに両手を眼にあててそれから苹果を見ました。男の子はまるでパイを喰(た)べるようにもうそれを喰べていました、また折角(せっかく)剥(む)いたそのきれいな皮も、くるくるコルク抜(ぬ)きのような形になって床(ゆか)へ落ちるまでの間にはすうっと、灰いろに光って蒸発してしまうのでした。
 二人はりんごを大切にポケットにしまいました。
 川下の向う岸に青く茂(しげ)った大きな林が見え、その枝(えだ)には熟してまっ赤に光る円い実がいっぱい、その林のまん中に高い高い三角標が立って、森の中からはオーケストラベルやジロフォンにまじって何とも云えずきれいな音いろが、とけるように浸(し)みるように風につれて流れて来るのでした。
 青年はぞくっとしてからだをふるうようにしました。
 だまってその譜(ふ)を聞いていると、そこらにいちめん黄いろやうすい緑の明るい野原か敷物かがひろがり、またまっ白な蝋(ろう)のような露(つゆ)が太陽の面を擦(かす)めて行くように思われました。
「まあ、あの烏(からす)。」カムパネルラのとなりのかおると呼ばれた女の子が叫びました。
「からすでない。みんなかささぎだ。」カムパネルラがまた何気なく叱(しか)るように叫びましたので、ジョバンニはまた思わず笑い、女の子はきまり悪そうにしました。まったく河原(かわら)の青じろいあかりの上に、黒い鳥がたくさんたくさんいっぱいに列になってとまってじっと川の微光(びこう)を受けているのでした。\n「かささぎですねえ、頭のうしろのとこに毛がぴんと延びてますから。」青年はとりなすように云いました。
 向うの青い森の中の三角標はすっかり汽車の正面に来ました。そのとき汽車のずうっとうしろの方からあの聞きなれた〔約二字分空白〕番の讃美歌(さんびか)のふしが聞えてきました。よほどの人数で合唱しているらしいのでした。青年はさっと顔いろが青ざめ、たって一ぺんそっちへ行きそうにしましたが思いかえしてまた座(すわ)りました。かおる子はハンケチを顔にあててしまいました。ジョバンニまで何だか鼻が変になりました。けれどもいつともなく誰(たれ)ともなくその歌は歌い出されだんだんはっきり強くなりました。思わずジョバンニもカムパネルラも一緒(いっしょ)にうたい出したのです。
 そして青い橄欖(かんらん)の森が見えない天の川の向うにさめざめと光りながらだんだんうしろの方へ行ってしまいそこから流れて来るあやしい楽器の音ももう汽車のひびきや風の音にすり耗(へ)らされてずうっとかすかになりました。
「あ孔雀(くじゃく)が居るよ。」
「ええたくさん居たわ。」女の子がこたえました。
 ジョバンニはその小さく小さくなっていまはもう一つの緑いろの貝ぼたんのように見える森の上にさっさっと青じろく時々光ってその孔雀がはねをひろげたりとじたりする光の反射を見ました。
「そうだ、孔雀の声だってさっき聞えた。」カムパネルラがかおる子に云(い)いました。
「ええ、三十疋(ぴき)ぐらいはたしかに居たわ。ハープのように聞えたのはみんな孔雀よ。」女の子が答えました。ジョバンニは俄(にわ)かに何とも云えずかなしい気がして思わず
「カムパネルラ、ここからはねおりて遊んで行こうよ。」とこわい顔をして云おうとしたくらいでした。
 川は二つにわかれました。そのまっくらな島のまん中に高い高いやぐらが一つ組まれてその上に一人の寛(ゆる)い服を着て赤い帽子(ぼうし)をかぶった男が立っていました。そして両手に赤と青の旗をもってそらを見上げて信号しているのでした。ジョバンニが見ている間その人はしきりに赤い旗をふっていましたが俄かに赤旗をおろしてうしろにかくすようにし青い旗を高く高くあげてまるでオーケストラの指揮者のように烈(はげ)しく振(ふ)りました。すると空中にざあっと雨のような音がして何かまっくらなものがいくかたまりもいくかたまりも鉄砲丸(てっぽうだま)のように川の向うの方へ飛んで行くのでした。ジョバンニは思わず窓からからだを半分出してそっちを見あげました。美しい美しい桔梗(ききょう)いろのがらんとした空の下を実に何万という小さな鳥どもが幾組(いくくみ)も幾組もめいめいせわしくせわしく鳴いて通って行くのでした。
「鳥が飛んで行くな。」ジョバンニが窓の外で云いました。
「どら、」カムパネルラもそらを見ました。そのときあのやぐらの上のゆるい服の男は俄かに赤い旗をあげて狂気(きょうき)のようにふりうごかしました。するとぴたっと鳥の群は通らなくなりそれと同時にぴしゃぁんという潰(つぶ)れたような音が川下の方で起ってそれからしばらくしいんとしました。と思ったらあの赤帽の信号手がまた青い旗をふって叫(さけ)んでいたのです。
「いまこそわたれわたり鳥、いまこそわたれわたり鳥。」その声もはっきり聞えました。それといっしょにまた幾万という鳥の群がそらをまっすぐにかけたのです。二人の顔を出しているまん中の窓からあの女の子が顔を出して美しい頬(ほほ)をかがやかせながらそらを仰(あお)ぎました。
「まあ、この鳥、たくさんですわねえ、あらまあそらのきれいなこと。」女の子はジョバンニにはなしかけましたけれどもジョバンニは生意気ないやだいと思いながらだまって口をむすんでそらを見あげていました。女の子は小さくほっと息をしてだまって席へ戻(もど)りました。カムパネルラが気の毒そうに窓から顔を引っ込(こ)めて地図を見ていました。
「あの人鳥へ教えてるんでしょうか。」女の子がそっとカムパネルラにたずねました。
「わたり鳥へ信号してるんです。きっとどこからかのろしがあがるためでしょう。」カムパネルラが少しおぼつかなそうに答えました。そして車の中はしぃんとなりました。ジョバンニはもう頭を引っ込めたかったのですけれども明るいとこへ顔を出すのがつらかったのでだまってこらえてそのまま立って口笛(くちぶえ)を吹(ふ)いていました。
(どうして僕(ぼく)はこんなにかなしいのだろう。僕はもっとこころもちをきれいに大きくもたなければいけない。あすこの岸のずうっと向うにまるでけむりのような小さな青い火が見える。あれはほんとうにしずかでつめたい。僕はあれをよく見てこころもちをしずめるんだ。)ジョバンニは熱(ほて)って痛いあたまを両手で押(おさ)えるようにしてそっちの方を見ました。(ああほんとうにどこまでもどこまでも僕といっしょに行くひとはないだろうか。カムパネルラだってあんな女の子とおもしろそうに談(はな)しているし僕はほんとうにつらいなあ。)ジョバンニの眼はまた泪(なみだ)でいっぱいになり天の川もまるで遠くへ行ったようにぼんやり白く見えるだけでした。
 そのとき汽車はだんだん川からはなれて崖(がけ)の上を通るようになりました。向う岸もまた黒いいろの崖が川の岸を下流に下るにしたがってだんだん高くなって行くのでした。そしてちらっと大きなとうもろこしの木を見ました。その葉はぐるぐるに縮れ葉の下にはもう美しい緑いろの大きな苞(ほう)が赤い毛を吐(は)いて真珠のような実もちらっと見えたのでした。それはだんだん数を増して来てもういまは列のように崖と線路との間にならび思わずジョバンニが窓から顔を引っ込めて向う側の窓を見ましたときは美しいそらの野原の地平線のはてまでその大きなとうもろこしの木がほとんどいちめんに植えられてさやさや風にゆらぎその立派なちぢれた葉のさきからはまるでひるの間にいっぱい日光を吸った金剛石(こんごうせき)のように露(つゆ)がいっぱいについて赤や緑やきらきら燃えて光っているのでした。カムパネルラが「あれとうもろこしだねえ」とジョバンニに云いましたけれどもジョバンニはどうしても気持がなおりませんでしたからただぶっきり棒に野原を見たまま「そうだろう。」と答えました。そのとき汽車はだんだんしずかになっていくつかのシグナルとてんてつ器の灯を過ぎ小さな停車場にとまりました。\n その正面の青じろい時計はかっきり第二時を示しその振子(ふりこ)は風もなくなり汽車もうごかずしずかなしずかな野原のなかにカチッカチッと正しく時を刻んで行くのでした。
 そしてまったくその振子の音のたえまを遠くの遠くの野原のはてから、かすかなかすかな旋律(せんりつ)が糸のように流れて来るのでした。「新世界交響楽(こうきょうがく)だわ。」姉がひとりごとのようにこっちを見ながらそっと云いました。全くもう車の中ではあの黒服の丈高(たけたか)い青年も誰(たれ)もみんなやさしい夢(ゆめ)を見ているのでした。\n(こんなしずかないいとこで僕はどうしてもっと愉快(ゆかい)になれないだろう。どうしてこんなにひとりさびしいのだろう。けれどもカムパネルラなんかあんまりひどい、僕といっしょに汽車に乗っていながらまるであんな女の子とばかり談(はな)しているんだもの。僕はほんとうにつらい。)ジョバンニはまた両手で顔を半分かくすようにして向うの窓のそとを見つめていました。すきとおった硝子(ガラス)のような笛が鳴って汽車はしずかに動き出し、カムパネルラもさびしそうに星めぐりの口笛を吹きました。\n「ええ、ええ、もうこの辺はひどい高原ですから。」うしろの方で誰(たれ)かとしよりらしい人のいま眼(め)がさめたという風ではきはき談している声がしました。
「とうもろこしだって棒で二尺も孔(あな)をあけておいてそこへ播(ま)かないと生えないんです。」
「そうですか。川まではよほどありましょうかねえ、」
「ええええ河までは二千尺から六千尺あります。もうまるでひどい峡谷(きょうこく)になっているんです。」
 そうそうここはコロラドの高原じゃなかったろうか、ジョバンニは思わずそう思いました。カムパネルラはまださびしそうにひとり口笛を吹き、女の子はまるで絹で包んだ苹果(りんご)のような顔いろをしてジョバンニの見る方を見ているのでした。突然(とつぜん)とうもろこしがなくなって巨(おお)きな黒い野原がいっぱいにひらけました。新世界交響楽はいよいよはっきり地平線のはてから湧(わ)きそのまっ黒\な野原のなかを一人のインデアンが白い鳥の羽根を頭につけたくさんの石を腕(うで)と胸にかざり小さな弓に矢を番(つが)えて一目散(いちもくさん)に汽車を追って来るのでした。
「あら、インデアンですよ。インデアンですよ。ごらんなさい。」
 黒服の青年も眼をさましました。ジョバンニもカムパネルラも立ちあがりました。\\n「走って来るわ、あら、走って来るわ。追いかけているんでしょう。」
「いいえ、汽車を追ってるんじゃないんですよ。猟(りょう)をするか踊(おど)るかしてるんですよ。」青年はいまどこに居るか忘れたという風にポケットに手を入れて立ちながら云いました。
 まったくインデアンは半分は踊っているようでした。第一かけるにしても足のふみようがもっと経済もとれ本気にもなれそうでした。にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ倒(たお)れるようになりインデアンはぴたっと立ちどまってすばやく弓を空にひきました。そこから一羽の鶴(つる)がふらふらと落ちて来てまた走り出したインデアンの大きくひろげた両手に落ちこみました。インデアンはうれしそうに立ってわらいました。そしてその鶴をもってこっちを見ている影(かげ)ももうどんどん小さく遠くなり電しんばしらの碍子(がいし)がきらっきらっと続いて二つばかり光ってまたとうもろこしの林になってしまいました。こっち側の窓を見ますと汽車はほんとうに高い高い崖(がけ)の上を走っていてその谷の底には川がやっぱり幅(はば)ひろく明るく流れていたのです。
「ええ、もうこの辺から下りです。何せこんどは一ぺんにあの水面までおりて行くんですから容易じゃありません。この傾斜(けいしゃ)があるもんですから汽車は決して向うからこっちへは来ないんです。そら、もうだんだん早くなったでしょう。」さっきの老人らしい声が云いました。
 どんどんどんどん汽車は降りて行きました。崖のはじに鉄道がかかるときは川が明るく下にのぞけたのです。ジョバンニはだんだんこころもちが明るくなって来ました。汽車が小さな小屋の前を通ってその前にしょんぼりひとりの子供が立ってこっちを見ているときなどは思わずほうと叫びました。
 どんどんどんどん汽車は走って行きました。室中(へやじゅう)のひとたちは半分うしろの方へ倒れるようになりながら腰掛(こしかけ)にしっかりしがみついていました。ジョバンニは思わずカムパネルラとわらいました。もうそして天の川は汽車のすぐ横手をいままでよほど激(はげ)しく流れて来たらしくときどきちらちら光ってながれているのでした。うすあかい河原(かわら)なでしこの花があちこち咲いていました。汽車はようやく落ち着いたようにゆっくりと走っていました。
 向うとこっちの岸に星のかたちとつるはしを書いた旗がたっていました。
「あれ何の旗だろうね。」ジョバンニがやっとものを云いました。
「さあ、わからないねえ、地図にもないんだもの。鉄の舟がおいてあるねえ。」
「ああ。」
「橋を架(か)けるとこじゃないんでしょうか。」女の子が云いました。
「あああれ工兵の旗だねえ。架橋(かきょう)演習をしてるんだ。けれど兵隊のかたちが見えないねえ。」
 その時向う岸ちかくの少し下流の方で見えない天の川の水がぎらっと光って柱のように高くはねあがりどぉと烈(はげ)しい音がしました。
「発破(はっぱ)だよ、発破だよ。」カムパネルラはこおどりしました。
 その柱のようになった水は見えなくなり大きな鮭(さけ)や鱒(ます)がきらっきらっと白く腹を光らせて空中に抛(ほう)り出されて円い輪を描いてまた水に落ちました。ジョバンニはもうはねあがりたいくらい気持が軽くなって云いました。
「空の工兵大隊だ。どうだ、鱒やなんかがまるでこんなになってはねあげられたねえ。僕こんな愉快な旅はしたことない。いいねえ。」
「あの鱒なら近くで見たらこれくらいあるねえ、たくさんさかな居るんだな、この水の中に。」
「小さなお魚もいるんでしょうか。」女の子が談(はなし)につり込(こ)まれて云いました。
「居るんでしょう。大きなのが居るんだから小さいのもいるんでしょう。けれど遠くだからいま小さいの見えなかったねえ。」ジョバンニはもうすっかり機嫌(きげん)が直って面白(おもしろ)そうにわらって女の子に答えました。
「あれきっと双子(ふたご)のお星さまのお宮だよ。」男の子がいきなり窓の外をさして叫(さけ)びました。
 右手の低い丘(おか)の上に小さな水晶(すいしょう)ででもこさえたような二つのお宮がならんで立っていました。
「双子のお星さまのお宮って何だい。」
「あたし前になんべんもお母さんから聴(き)いたわ。ちゃんと小さな水晶のお宮で二つならんでいるからきっとそうだわ。」
「はなしてごらん。双子のお星さまが何したっての。」
「ぼくも知ってらい。双子のお星さまが野原へ遊びにでてからすと喧嘩(けんか)したんだろう。」
「そうじゃないわよ。あのね、天の川の岸にね、おっかさんお話なすったわ、……」
「それから彗星(ほうきぼし)がギーギーフーギーギーフーて云って来たねえ。」
「いやだわたあちゃんそうじゃないわよ。それはべつの方だわ。」
「するとあすこにいま笛(ふえ)を吹(ふ)いて居るんだろうか。」
「いま海へ行ってらあ。」
「いけないわよ。もう海からあがっていらっしゃったのよ。」
「そうそう。ぼく知ってらあ、ぼくおはなししよう。」

 川の向う岸が俄(にわ)かに赤くなりました。楊(やなぎ)の木や何かもまっ黒にすかし出され見えない天の川の波もときどきちらちら針のように赤く光りました。まったく向う岸の野原に大きなまっ赤な火が燃されその黒\いけむりは高く桔梗(ききょう)いろのつめたそうな天をも焦(こ)がしそうでした。ルビーよりも赤くすきとおりリチウムよりもうつくしく酔(よ)ったようになってその火は燃えているのでした。
「あれは何の火だろう。あんな赤く光る火は何を燃やせばできるんだろう。」ジョバンニが云(い)いました。
「蝎(さそり)の火だな。」カムパネルラが又(また)地図と首っ引きして答えました。
「あら、蝎の火のことならあたし知ってるわ。」
「蝎の火ってなんだい。」ジョバンニがききました。
「蝎がやけて死んだのよ。その火がいまでも燃えてるってあたし何べんもお父さんから聴いたわ。」
「蝎って、虫だろう。」
「ええ、蝎は虫よ。だけどいい虫だわ。」
「蝎いい虫じゃないよ。僕博物館でアルコールにつけてあるの見た。尾にこんなかぎがあってそれで螫(さ)されると死ぬって先生が云ったよ。」
「そうよ。だけどいい虫だわ、お父さん斯(こ)う云ったのよ。むかしのバルドラの野原に一ぴきの蝎がいて小さな虫やなんか殺してたべて生きていたんですって。するとある日いたちに見附(みつ)かって食べられそうになったんですって。さそりは一生けん命遁(に)げて遁げたけどとうとういたちに押(おさ)えられそうになったわ、そのときいきなり前に井戸があってその中に落ちてしまったわ、もうどうしてもあがられないでさそりは溺(おぼ)れはじめたのよ。そのときさそりは斯う云ってお祈(いの)りしたというの、
 ああ、わたしはいままでいくつのものの命をとったかわからない、そしてその私がこんどいたちにとられようとしたときはあんなに一生けん命にげた。それでもとうとうこんなになってしまった。ああなんにもあてにならない。どうしてわたしはわたしのからだをだまっていたちに呉(く)れてやらなかったろう。そしたらいたちも一日生きのびたろうに。どうか神さま。私の心をごらん下さい。こんなにむなしく命をすてずどうかこの次にはまことのみんなの幸(さいわい)のために私のからだをおつかい下さい。って云ったというの。そしたらいつか蝎はじぶんのからだがまっ赤なうつくしい火になって燃えてよるのやみを照らしているのを見たって。いまでも燃えてるってお父さん仰(おっしゃ)ったわ。ほんとうにあの火それだわ。」
「そうだ。見たまえ。そこらの三角標はちょうどさそりの形にならんでいるよ。」
 ジョバンニはまったくその大きな火の向うに三つの三角標がちょうどさそりの腕(うで)のようにこっちに五つの三角標がさそりの尾やかぎのようにならんでいるのを見ました。そしてほんとうにそのまっ赤なうつくしいさそりの火は音なくあかるくあかるく燃えたのです。
 その火がだんだんうしろの方になるにつれてみんなは何とも云えずにぎやかなさまざまの楽の音(ね)や草花の匂(におい)のようなもの口笛や人々のざわざわ云う声やらを聞きました。それはもうじきちかくに町か何かがあってそこにお祭でもあるというような気がするのでした。
「ケンタウル露(つゆ)をふらせ。」いきなりいままで睡(ねむ)っていたジョバンニのとなりの男の子が向うの窓を見ながら叫んでいました。
 ああそこにはクリスマストリイのようにまっ青な唐檜(とうひ)かもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆電燈(まめでんとう)がまるで千の蛍(ほたる)でも集ったようについていました。
「ああ、そうだ、今夜ケンタウル祭だねえ。」
「ああ、ここはケンタウルの村だよ。」カムパネルラがすぐ云いました。〔以下原稿一枚?なし〕

「ボール投げなら僕(ぼく)決してはずさない。」
 男の子が大威張(おおいば)りで云いました。
「もうじきサウザンクロスです。おりる支度(したく)をして下さい。」青年がみんなに云いました。
「僕も少し汽車へ乗ってるんだよ。」男の子が云いました。カムパネルラのとなりの女の子はそわそわ立って支度をはじめましたけれどもやっぱりジョバンニたちとわかれたくないようなようすでした。\\n「ここでおりなけぁいけないのです。」青年はきちっと口を結んで男の子を見おろしながら云いました。
「厭(いや)だい。僕もう少し汽車へ乗ってから行くんだい。」\\n ジョバンニがこらえ兼ねて云いました。
「僕たちと一緒(いっしょ)に乗って行こう。僕たちどこまでだって行ける切符(きっぷ)持ってるんだ。」\n「だけどあたしたちもうここで降りなけぁいけないのよ。ここ天上へ行くとこなんだから。」女の子がさびしそうに云いました。
「天上へなんか行かなくたっていいじゃないか。ぼくたちここで天上よりももっといいとこをこさえなけぁいけないって僕の先生が云ったよ。」
「だっておっ母さんも行ってらっしゃるしそれに神さまが仰(お)っしゃるんだわ。」
「そんな神さまうその神さまだい。」
「あなたの神さまうその神さまよ。」
「そうじゃないよ。」
「あなたの神さまってどんな神さまですか。」青年は笑いながら云いました。
「ぼくほんとうはよく知りません、けれどもそんなんでなしにほんとうのたった一人の神さまです。」
「ほんとうの神さまはもちろんたった一人です。」
「ああ、そんなんでなしにたったひとりのほんとうのほんとうの神さまです。」
「だからそうじゃありませんか。わたくしはあなた方がいまにそのほんとうの神さまの前にわたくしたちとお会いになることを祈ります。」青年はつつましく両手を組みました。女の子もちょうどその通りにしました。みんなほんとうに別れが惜(お)しそうでその顔いろも少し青ざめて見えました。ジョバンニはあぶなく声をあげて泣き出そうとしました。
「さあもう支度はいいんですか。じきサウザンクロスですから。」
 ああそのときでした。見えない天の川のずうっと川下に青や橙(だいだい)やもうあらゆる光でちりばめられた十字架(じゅうじか)がまるで一本の木という風に川の中から立ってかがやきその上には青じろい雲がまるい環(わ)になって後光のようにかかっているのでした。汽車の中がまるでざわざわしました。みんなあの北の十字のときのようにまっすぐに立ってお祈りをはじめました。あっちにもこっちにも子供が瓜(うり)に飛びついたときのようなよろこびの声や何とも云いようない深いつつましいためいきの音ばかりきこえました。そしてだんだん十字架は窓の正面になりあの苹果(りんご)の肉のような青じろい環の雲もゆるやかにゆるやかに繞(めぐ)っているのが見えました。
「ハルレヤハルレヤ。」明るくたのしくみんなの声はひびきみんなはそのそらの遠くからつめたいそらの遠くからすきとおった何とも云えずさわやかなラッパの声をききました。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯(あかり)のなかを汽車はだんだんゆるやかになりとうとう十字架のちょうどま向いに行ってすっかりとまりました。
「さあ、下りるんですよ。」青年は男の子の手をひきだんだん向うの出口の方へ歩き出しました。
「じゃさよなら。」女の子がふりかえって二人に云いました。
「さよなら。」ジョバンニはまるで泣き出したいのをこらえて怒(おこ)ったようにぶっきり棒に云いました。女の子はいかにもつらそうに眼(め)を大きくしても一度こっちをふりかえってそれからあとはもうだまって出て行ってしまいました。汽車の中はもう半分以上も空いてしまい俄(にわ)かにがらんとしてさびしくなり風がいっぱいに吹(ふ)き込(こ)みました。
 そして見ているとみんなはつつましく列を組んであの十字架の前の天の川のなぎさにひざまずいていました。そしてその見えない天の川の水をわたってひとりの神々(こうごう)しい白いきものの人が手をのばしてこっちへ来るのを二人は見ました。けれどもそのときはもう硝子(ガラス)の呼子(よびこ)は鳴らされ汽車はうごき出しと思ううちに銀いろの霧(きり)が川下の方からすうっと流れて来てもうそっちは何も見えなくなりました。ただたくさんのくるみの木が葉をさんさんと光らしてその霧の中に立ち黄金(きん)の円光をもった電気栗鼠(りす)が可愛(かあい)い顔をその中からちらちらのぞいているだけでした。

 そのときすうっと霧がはれかかりました。どこかへ行く街道らしく小さな電燈の一列についた通りがありました。それはしばらく線路に沿って進んでいました。そして二人がそのあかしの前を通って行くときはその小さな豆いろの火はちょうど挨拶(あいさつ)でもするようにぽかっと消え二人が過ぎて行くときまた点(つ)くのでした。
 ふりかえって見るとさっきの十字架はすっかり小さくなってしまいほんとうにもうそのまま胸にも吊(つる)されそうになり、さっきの女の子や青年たちがその前の白い渚(なぎさ)にまだひざまずいているのかそれともどこか方角もわからないその天上へ行ったのかぼんやりして見分けられませんでした。
 ジョバンニはああと深く息しました。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸(さいわい)のためならば僕のからだなんか百ぺん灼(や)いてもかまわない。」
「うん。僕だってそうだ。」カムパネルラの眼にはきれいな涙(なみだ)がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう。」ジョバンニが云いました。
「僕わからない。」カムパネルラがぼんやり云いました。
「僕たちしっかりやろうねえ。」ジョバンニが胸いっぱい新らしい力が湧(わ)くようにふうと息をしながら云いました。
「あ、あすこ石炭袋(ぶくろ)だよ。そらの孔(あな)だよ。」カムパネルラが少しそっちを避(さ)けるようにしながら天の川のひととこを指さしました。ジョバンニはそっちを見てまるでぎくっとしてしまいました。天の川の一とこに大きなまっくらな孔がどほんとあいているのです。その底がどれほど深いかその奥(おく)に何があるかいくら眼をこすってのぞいてもなんにも見えずただ眼がしんしんと痛むのでした。ジョバンニが云いました。
「僕もうあんな大きな暗(やみ)の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。みんな集ってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。あっあすこにいるのぼくのお母さんだよ。」カムパネルラは俄(にわ)かに窓の遠くに見えるきれいな野原を指して叫(さけ)びました。
 ジョバンニもそっちを見ましたけれどもそこはぼんやり白くけむっているばかりどうしてもカムパネルラが云ったように思われませんでした。何とも云えずさびしい気がしてぼんやりそっちを見ていましたら向うの河岸に二本の電信ばしらが丁度両方から腕(うで)を組んだように赤い腕木をつらねて立っていました。
「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ。」ジョバンニが斯(こ)う云いながらふりかえって見ましたらそのいままでカムパネルラの座(すわ)っていた席にもうカムパネルラの形は見えずただ黒いびろうどばかりひかっていました。ジョバンニはまるで鉄砲丸(てっぽうだま)のように立ちあがりました。そして誰(たれ)にも聞えないように窓の外へからだを乗\り出して力いっぱいはげしく胸をうって叫びそれからもう咽喉(のど)いっぱい泣きだしました。もうそこらが一ぺんにまっくらになったように思いました。\

 ジョバンニは眼をひらきました。もとの丘(おか)の草の中につかれてねむっていたのでした。胸は何だかおかしく熱(ほて)り頬(ほほ)にはつめたい涙がながれていました。
 ジョバンニはばねのようにはね起きました。町はすっかりさっきの通りに下でたくさんの灯を綴(つづ)ってはいましたがその光はなんだかさっきよりは熱したという風でした。そしてたったいま夢(ゆめ)であるいた天の川もやっぱりさっきの通りに白くぼんやりかかりまっ黒な南の地平線の上では殊(こと)にけむったようになってその右には蠍座(さそりざ)の赤い星がうつくしくきらめき、そらぜんたいの位置はそんなに変ってもいないようでした。\n ジョバンニは一さんに丘を走って下りました。まだ夕ごはんをたべないで待っているお母さんのことが胸いっぱいに思いだされたのです。どんどん黒い松(まつ)の林の中を通ってそれからほの白い牧場の柵(さく)をまわってさっきの入口から暗い牛舎の前へまた来ました。そこには誰かがいま帰ったらしくさっきなかった一つの車が何かの樽(たる)を二つ乗\っけて置いてありました。\
「今晩は、」ジョバンニは叫びました。
「はい。」白い太いずぼんをはいた人がすぐ出て来て立ちました。
「何のご用ですか。」
「今日牛乳がぼくのところへ来なかったのですが」
「あ済みませんでした。」その人はすぐ奥へ行って一本の牛乳瓶(ぎゅうにゅうびん)をもって来てジョバンニに渡(わた)しながらまた云いました。
「ほんとうに、済みませんでした。今日はひるすぎうっかりしてこうしの棚をあけて置いたもんですから大将早速親牛のところへ行って半分ばかり呑んでしまいましてね……」その人はわらいました。
「そうですか。ではいただいて行きます。」
「ええ、どうも済みませんでした。」
「いいえ。」
 ジョバンニはまだ熱い乳の瓶を両方のてのひらで包むようにもって牧場の柵を出ました。
 そしてしばらく木のある町を通って大通りへ出てまたしばらく行きますとみちは十文字になってその右手の方、通りのはずれにさっきカムパネルラたちのあかりを流しに行った川へかかった大きな橋のやぐらが夜のそらにぼんやり立っていました。
 ところがその十字になった町かどや店の前に女たちが七八人ぐらいずつ集って橋の方を見ながら何かひそひそ談(はな)しているのです。それから橋の上にもいろいろなあかりがいっぱいなのでした。
 ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思いました。そしていきなり近くの人たちへ
「何かあったんですか。」と叫ぶようにききました。
「こどもが水へ落ちたんですよ。」一人が云いますとその人たちは一斉(いっせい)にジョバンニの方を見ました。ジョバンニはまるで夢中で橋の方へ走りました。橋の上は人でいっぱいで河が見えませんでした。白い服を着た巡査(じゅんさ)も出ていました。
 ジョバンニは橋の袂(たもと)から飛ぶように下の広い河原へおりました。
 その河原の水際(みずぎわ)に沿ってたくさんのあかりがせわしくのぼったり下ったりしていました。向う岸の暗いどてにも火が七つ八つうごいていました。そのまん中をもう烏瓜(からすうり)のあかりもない川が、わずかに音をたてて灰いろにしずかに流れていたのでした。
 河原のいちばん下流の方へ州(す)のようになって出たところに人の集りがくっきりまっ黒に立っていました。ジョバンニはどんどんそっちへ走りました。するとジョバンニはいきなりさっきカムパネルラといっしょだったマルソに会いました。マルソがジョバンニに走り寄ってきました。\\n「ジョバンニ、カムパネルラが川へはいったよ。」
「どうして、いつ。」
「ザネリがね、舟の上から烏うりのあかりを水の流れる方へ押(お)してやろうとしたんだ。そのとき舟がゆれたもんだから水へ落っこったろう。するとカムパネルラがすぐ飛びこんだんだ。そしてザネリを舟の方へ押してよこした。ザネリはカトウにつかまった。けれどもあとカムパネルラが見えないんだ。」
「みんな探してるんだろう。」
「ああすぐみんな来た。カムパネルラのお父さんも来た。けれども見附(みつ)からないんだ。ザネリはうちへ連れられてった。」
 ジョバンニはみんなの居るそっちの方へ行きました。そこに学生たち町の人たちに囲まれて青じろい尖(とが)ったあごをしたカムパネルラのお父さんが黒い服を着てまっすぐに立って右手に持った時計をじっと見つめていたのです。\n みんなもじっと河を見ていました。誰(たれ)も一言も物を云う人もありませんでした。ジョバンニはわくわくわくわく足がふるえました。魚をとるときのアセチレンランプがたくさんせわしく行ったり来たりして黒い川の水はちらちら小さな波をたてて流れているのが見えるのでした。\\n 下流の方は川はば一ぱい銀河が巨(おお)きく写ってまるで水のないそのままのそらのように見えました。
 ジョバンニはそのカムパネルラはもうあの銀河のはずれにしかいないというような気がしてしかたなかったのです。
 けれどもみんなはまだ、どこかの波の間から、
「ぼくずいぶん泳いだぞ。」と云いながらカムパネルラが出て来るか或(ある)いはカムパネルラがどこかの人の知らない洲にでも着いて立っていて誰かの来るのを待っているかというような気がして仕方ないらしいのでした。けれども俄(にわ)かにカムパネルラのお父さんがきっぱり云いました。
「もう駄目(だめ)です。落ちてから四十五分たちましたから。」
 ジョバンニは思わずかけよって博士の前に立って、ぼくはカムパネルラの行った方を知っていますぼくはカムパネルラといっしょに歩いていたのですと云おうとしましたがもうのどがつまって何とも云えませんでした。すると博士はジョバンニが挨拶(あいさつ)に来たとでも思ったものですか、しばらくしげしげジョバンニを見ていましたが
「あなたはジョバンニさんでしたね。どうも今晩はありがとう。」と叮(てい)ねいに云いました。
 ジョバンニは何も云えずにただおじぎをしました。
「あなたのお父さんはもう帰っていますか。」博士は堅(かた)く時計を握(にぎ)ったまままたききました。
「いいえ。」ジョバンニはかすかに頭をふりました。
「どうしたのかなあ。ぼくには一昨日(おととい)大へん元気な便りがあったんだが。今日あたりもう着くころなんだが。船が遅(おく)れたんだな。ジョバンニさん。あした放課後みなさんとうちへ遊びに来てくださいね。」
 そう云いながら博士はまた川下の銀河のいっぱいにうつった方へじっと眼を送りました。
 ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいでなんにも云えずに博士の前をはなれて早くお母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うともう一目散に河原を街の方へ走りました。

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